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中央大1区・吉居大和の“飛び出し”が時代を変えた――箱根駅伝2022「忘れられない名場面」往路編

2022/01/05
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【5区】“二代目山の神”柏原竜二さんに聞いた「5区の正しい走り方」

西本 5区はこの一言に尽きます。「山を登りたいならアルファフライを履くな」

ポール 何かの格言のようですがシューズの話ですね。ナイキを履くならヴェイパーフライはいいけど、アルファフライは登りに合わないと。

西本 反発が強くて、足を乗せるだけで前に進むから、履きたい気持ちは分かるんですけど……。これは“二代目山の神”こと柏原竜二さんが言っていたのですが「路面に傾斜があるのに傾斜の強い厚底を履いたら、体が後ろに傾くじゃん!」と。

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桃澤 僕も5区は傾斜の少ないシューズの方が向いていると思います。

ポール 他の区間以上にシューズが大事ですね。ちなみに区間賞をとった帝京大の細谷翔馬選手はアディダスのTAKUMI SEN8を履いていました。

西本 同じアディダスでもアディオスPROよりは薄い。その選択は正しいと思います。5区にかぎってみると、デサントのGENTENもしくは、アシックスのメタスピードエッジあたりが良さそうな気もするんだよなあ。

 あと青学大の若林宏樹選手を見ていて思ったんだけど、5区の選手ってみんな歯並びがきれいですよね。

ポール 突然(笑)。

青学大・若林宏樹選手 ©JMPA

西本 5区ってバランス感覚が求められるから、歯並びにも現れるのかなと思って(笑)。ところでこれも柏原さんが言っていましたが、5区は登りだけでなく下りもポイントで、下りは恐怖心を取り除けるかどうかが重要だと。

桃澤 わかります!

西本 柏原さんは4年目でようやく「ガードレールに突っ込んでもいい」と開き直ることができて、恐怖心を取り除けたそうです。

ポール 実際にガードレールに突っ込んでほしくはないですが、それぐらいの勢いが必要ということですね。

西本 それと下りの走り方でもう一つ。今回多くの選手がカーブを曲がる時に最短距離となるインコースを狙っていたけれど、柏原さんに言わせると、インコースにこだわらず、スピードを落とさないことが大事だそう。

 例えば今回、1年生ながら登りでは素晴らしい走りを見せた青学大の若林選手も、下りではインコースを攻めるあまり、カーブを曲がるたびにスピードが落ちていた。だけど柏原さん曰く、カーブが続く5区の下りは遠心力を使って少し膨らむくらいのコースどりの方が、スピードを落とさずに走り抜けることができるらしい。

ポール なるほど、下りではストライドも伸びるから距離が多少伸びることよりも、スピードを落とさないことが大事なんですね。

西本 来年は5区の“下り”にも注目してみたいですね。

構成/林田順子(モオ)

「復路編」へ続く

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