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10区の名所「寺田交差点」で起きた“新たな事件”――箱根駅伝2022「忘れられない名場面」復路編

2022/01/05
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 2位以下を10分以上も引き離す、驚異のタイムで青学大が総合優勝した今年の箱根駅伝。駅伝マニア集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さんとポールさんが名場面を語り合うシリーズの復路編。特別ゲストとして早稲田大OBの竹澤健介さん、ニューイヤー駅伝を走ったばかりのサンベルクスの桃澤大祐選手もちょこっと参戦し、マニアックに語り合ってもらった。(往路編から読む)

順天堂大の6区・牧瀬圭斗選手から7区・西澤侑真選手へのタスキリレー ©JMPA

◆ ◆ ◆

【6区】下りの走り方に秘密があった!

西本 ようやく桃澤さんと一緒に6区を見ることができました。桃澤さんは山梨学院大時代に6区を3回走り、“下り”に人生を見出した選手だけに、その見方がすごく的確なんです。まずは6区の走り方を教えてください。

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山梨学院大時代の桃澤さん $copy;EKIDEN News

桃澤 大切なのは腕振りです。

西本 ランナーだからつい足元を見がちだけど、ポイントは腕なんですか?

桃澤 はい。普通に振っていると下りでは“腕が逃げる”んですよね。

ポール 腕が逃げる?

桃澤 腕が左右にブレて不安定になりやすいんです。それを避けるには腕を下の方で振る必要があります。そうしないと上に跳ねちゃう。下りでは上ではなく、前に飛びたいんです。ですから、肩甲骨を動かす意識は変えずに腕を下げて、腰骨に拳が当たるぐらいの位置で振り続けるのがポイントです。

西本 それ、“山の神”柏原竜二さんも言ってました!

ポール 駒澤大にいた千葉健太さんがまさしくそんなフォームでしたね。

駒澤大で6区を走った千葉健太さん ©EKIDEN News

西本 コースでのポイントはありますか?

桃澤 まずは芦ノ湯。6区をスタートして、最初の計測ポイントが芦ノ湯なんですが、ここでの通過タイムは気にするなと言いたいですね。芦ノ湯までは登りで、そこを超えてからの下りが勝負。区間記録を狙うなら別ですが、芦ノ湯までのタイムは全然参考になりません。

西本 と言うことは芦ノ湯までぶっ飛ばして、そのまま区間賞をとった2020年の館澤亨次選手は化け物だったってことですね。

東海大時代の館澤亨次選手 ©EKIDEN News

桃澤 そうですね。次のポイントが大平台のヘアピンカーブ。ここで体に角度をつけて曲がれるかどうかで、その後のタイムの伸びがわかります。

ポール なるほど。

桃澤 大平台は路面が内側に傾いたバンクになっているのですが、下りの勢いが強いので体を傾けないとスピードに乗って曲がることができない。ここで腰が立っている選手は、体を傾けるだけの体力がなくなっているということ。つまり、その後失速しやすいんです。

西本 桃澤さんは今年、順天堂の牧瀬圭斗選手や駒澤大の佃康平選手の走りを褒めていましたよね。

桃澤 はい、二人はとてもいい走りだったと思います。最後のポイントは湯本から平地になったところで走りを切り替えられるかどうか。坂道を下っている時はどうしても重心が後ろになる。その重心を湯本で元に戻せるかどうかがカギです。

 ちなみに5区の山登りでは履かないほうがいいと言ったナイキのシューズ、アルファフライですが、6区ではアルファフライ一択です。カーボンの反発をうまくつかうとストライドが伸びます。

西本 皆さん、これはテストに出るので覚えておいてください(笑)。