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10区の名所「寺田交差点」で起きた“新たな事件”――箱根駅伝2022「忘れられない名場面」復路編

2022/01/05
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【10区】「その1秒を削り出」した清野太雅

西本 青学大の優勝が決定的となり“ピクニックラン”となりましたが、10区の見せ場を作ったのは東洋大。往路終了時では「シード争い」の9位だった東洋大が4位に飛び込んできたのですから。東洋大といえば「その1秒を削り出せ」のキャッチフレーズを選手が腕に書く伝統がありますが、少し形骸化しつつあるんじゃないか?と思うときもあって。

ポール シールプリントだった時期もありましたからね。

西本 それを見て「そういうことじゃないんだよ、スピリットの問題なんだよ!」と思っていました。ところが今年の復路は東洋大の“1秒を削り出す走り”らしい走りを堪能することができた。そして最後の最後にダメ押しのように熱い走りを見せた清野太雅選手。駒澤大の青柿響選手とのデッドヒートは名場面でした。

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ポール 優勝もシード権も絡んでいないのに、こんなに興奮したのは久々でした。

東洋大・清野太雅選手 ©鈴木七絵/文藝春秋

10年目の「寺田交差点」で起きた新たな事件

西本 そして忘れちゃいけないのが、毎年10区を見守っている人の存在です。それが國學院大OBでJR東日本に在籍する寺田夏生選手。

ポール 2011年の箱根駅伝10区、激しいシード圏争いが繰り広げられる中、ゴール100m手前の交差点でコースを間違え、危うくシードを逃しそうになったことで有名になった選手です。問題となった交差点は駅伝ファンの間では“寺田交差点”と呼ばれて名所となっています。

西本 あの事件から10年。メモリアルイヤーとなる今年も、寺田選手はテレビでみんなが無事にゴールするところを見守っていたのですが、そこで新たな事件が起きました。法政大の川上有生選手が同じ場所で、同じコース間違いをおかしそうになったんです。それを見ていた寺田選手は「(笑)」とツイート。その後「分かるよ」と連投し、Twitterでは「寺田交差点」がトレンド入りしました。

寺田交差点に立つ寺田夏生氏 ©文藝春秋

ポール 「寺田交差点」って、西本さんが最初に言い始めたんですよね。

西本 そうそう。僕らが監修している『あまりに細かすぎる箱根駅伝』でも、初年度から欠かさず地図にブックマークしていたんだけど、今年、川上選手が間違えたことで、一気に知名度が上がった。なんと箱根が終わってGoogleMapを見たら、本来は名前のない交差点が「寺田交差点」になっていて、ジャンルが「聖地」になっていた(笑)。

ポール(爆笑)