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「結局あいつが全部持っていった!」

西本 今回は寺田交差点10周年を記念して、なぜ寺田選手がコースを間違えたかをあらためて残しておきます。当時の寺田選手は1年生。急に10区を走ることになり、前田監督と車でコースの下見に行った。ところが練習終わりで眠たかった寺田選手は、監督の「ここを曲がったら、スパートだ」という指示をぼんやりとしか聞いていなかったんです。レース当日、シード権争いをする寺田選手の目の前には中継車がいて、ゴールが隠れて見えなかった。そして出番を終えた中継車が右折したことで、「ここが監督の言っていた最後のスパートか!」と勘違いして、右折してしまったんです。その場にいた全員が「違う!」と叫んだことで、気付いた寺田選手は慌ててコースに戻り、ぎりぎりシードを獲得しました。

ポール ゴールした寺田選手の第一声は「あっぶねー!」でしたね。1年生なのに(笑)。

西本 チームメイトは「みんなで頑張ってシード権を取ったのに、結局あいつが全部持っていった!」と怒っていたそうです(笑)。

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「箱根を見る楽しみがまたひとつ増えた」

 青山学院大の優勝以外にも、色々な見どころがあった今年の箱根駅伝。最後に西本氏はテレビ中継の進化にも言及した。

「2年連続テレビで観戦して、テレビ中継も少しずつ進化していることに気づきました。4選手の位置をリアルタイムに反映する地図の上に、それぞれの選手の様子をワイプで同時に映し出したり、早川でのクレーンがこれまでよりもさらに上下左右に動くようになっていたり。これまでも給水にはドラマがあると言いつづけてきたのですが、今年は給水係も日本テレビは把握していたのでしょう。選手だけでなく給水係にもテロップが入るようになりました。来年の中継はどう進化するのか。箱根を見る楽しみがまたひとつ増えたと思っています」

総合優勝のゴールテープを切った青学大・中倉啓敦選手 ©鈴木七絵/文藝春秋

構成/林田順子(モオ)