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中央大1区・吉居大和の“飛び出し”が時代を変えた――箱根駅伝2022「忘れられない名場面」往路編

2022/01/05
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【4区】花尾と飯田の“因縁の対決”がすごかった

西本 4区はちょっと真面目な話をしたいんですけど。

ポール 今までふざけていたんですか?(笑)

西本 実は今回の4区を見て「因縁というものはあるんだな」と感じたんです。駒澤大の花尾恭輔選手と、青学大の飯田貴之選手は、昨年の全日本大学駅伝でともに最終8区を走りました。結果は花尾選手が追いすがる飯田選手を最後に引き離して8秒差でゴールし、駒澤大が優勝を果たしました。ただ、飯田選手が力負けしたかと言うとそうともいえない。

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ポール ゴール後は飯田選手の方が、余裕があるように見えました。

青学大・飯田恭輔選手 ©末永裕樹/文藝春秋

西本 レース前、監督からラスト1kmが勝負所であると指示があったそうなのです。優勝がかかったアンカー勝負。キャプテンの飯田選手はチームプレーに徹しようと、動きには余裕があったにもかかわらず、監督の指示どおり前に出ずに花尾選手と並走。結果、花尾選手のリズムにハマってしまい、ラスト2kmで仕掛けに入った花尾選手のラストスパートへの反応ができなかった。

ポール それは悔しいですね。

西本 ゴール後、ダウンのために走りだす飯田選手がこちらに向かってきたんですが、あまりの形相に、僕は写真も撮れず、「こわっ!」と思って引いちゃいました。それぐらい悔しかったんでしょう。

ポール 飯田選手は「もう2位はこりごり」と言ってましたしね。その2人がそろって4区にエントリーされた。確かに因縁の対決です。

西本 あの全日本での敗戦で青学全体に「迷うくらいなら行け!」というマインドが広まった。これで火がついたなと思いました。だからこそ、原監督は戦前から総合記録更新という目標をかかげ、タイムにこだわった。キャプテンとしての重責を担ってきた飯田選手がのびのびと走ること。これがチーム全体へのメッセージだったんですね。