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【2区】田澤廉は「箱根から世界へ」を現実にするか

西本 先ほどの12月の日体大記録会では、もう一人1万mで好走をした選手がいました。駒澤大の田澤廉選手です。今年7月、オレゴンのユージーンで世界陸上が行われるのですが、この大会に参加するための標準記録を、大八木弘明監督は田澤選手に突破させようとしていました。

ポール 見事、日本歴代2位の記録(27分23秒44)で、出場権を獲得しましたよね。

日体大記録会での田澤選手 ©EKIDEN News

西本 あのとき、現場にいた誰もが記録を喜びつつも、「これで田澤選手は箱根は難しくなった」と思いました。なぜなら11月末の八王子ロングディスタンスで好走した選手は正月は走れない、というのは長距離ファンにとって定説。それが箱根まで1ヶ月を切った12月で狙うというのは、箱根までにリカバリーするのが精一杯というのがこれまでの見立てだからです。

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ポール 少なくとも普通はエース区間の2区に配置はしないですよね。負担の軽い区間を走らせて、それをチーム全体でカバーするのがセオリー。

駒澤大・田澤廉選手 ©JMPA

西本 それが2区を走って、区間賞まで取ったというのだから、あり得ない。田澤選手はただ速いだけの選手じゃないと実感しました。逆に下馬評が高かった順天堂大の三浦龍司選手は、1時間7分44秒とタイムは決して悪くなかったんだけど、区間11位。

竹澤 ラストが上りになる2区では三浦選手の持ち味は生かしにくいと思います。コース特性としては、1区か3区の方が合っている気がします。

西本 おっとここで早稲田大時代に2区と3区を走って3年連続区間賞の竹澤さん登場ですね! 竹澤さんに伺いたいのが、「三浦の育て方」です。トラックと箱根駅伝を両立させて北京オリンピックに出た竹澤さんにそこがききたい。三浦選手の主戦場は3000m障害。いくら花の2区とはいえ、トラックよりも圧倒的に遅いスピードで長い距離を走りつづけることは結びつかないような気がするんです。

竹澤 箱根をうまく利用することが大事です。きちんと20kmの練習をして、体づくりをすればいいと思うんです。一番良くないのは、5000m、1万mの練習をしながら、突貫工事で体づくりをして箱根に出て、なんとなく好走してしまうパターンです。ただ今回の箱根は決して悪くなかったですし、世界陸上で戦うための基礎体力づくりができたと思えばいいんじゃないでしょうか。

西本 なるほど。そういえば、吉居選手と田澤選手の区間賞インタビューでも、箱根に関する話はほとんどなく、世界を意識したようなコメントに終始しました。三浦選手も含め、今年は箱根駅伝のメインテーマである「箱根から世界へ」が実現しそうですね。