アシックスであれば「メタスピード」のなかで、推進力に優れた「スカイ」と足捌きに優れた「エッジ」が用意されていますし、アディダスであればクッション性に優れた「アディオスプロ」と、スピードの上げ下げにビビッドに反応する「タクミセン」がある。そのなかで選手それぞれが自分の走りの特性に合うモデルを選んでいるのです。
なぜ同チーム内で“アディダス派”が固まるのか?
今回18%のシェアを獲得したアディダスは、選手たちの口コミでシェアが広がったような印象を受けます。というのも、アディダスにユニフォーム提供を受けている、いわゆる「アディダススクール」でのシューズ着用率は意外と低く、それ以外の学校に集中して着用する選手が現れているからです。例えば日体大はナイキ3人に対してアディダスが6人、創価大もナイキ3人に対してアディダスが6人、東京国際大はナイキとアディダスが3人ずつと拮抗しています。
今の学生たちは、大学生になってからずっとナイキしか履いていない選手も多い。にもかかわらず同チーム内で、これだけアディダス派が固まるというのは、チームの横のつながりでその良さが広がっていると考えられます。
ちなみにアディダスの「アディオスプロ3」は1万m28分台の記録を持つニックという天才(僕もドイツでお会いしました)が中心となって作ったモデルなのですが、軽量化するためにイレギュラーな形に削ったソールや、プレートではなくロッド状のカーボンを採用するなど、独創的だけどものすごい良いシューズになっています。
1人から7人に増えたプーマのこれから
さて、前回の箱根から大きくシェアを伸ばしたのがプーマです。昨年は明治大学・加藤大誠選手ひとりしか履いていませんでした。加藤選手はF1好きで、尊敬する選手を聞かれると陸上選手ではなく「ルイス・ハミルトン」と答えるほど(笑)。そのハミルトンはプーマのトレーニングシューズを履いていることから加藤選手も唯一プーマを着用したと思われますが、今大会はなんと7人がプーマを履きました。
プーマは箱根駅伝前に着用の可能性がある選手をプレスリリースで配信するなど、営業活動にかなり力を入れていることが伝わってきますし、ここからどう伸びるのか期待しています。ちなみに箱根ラストランでもプーマを履いた加藤選手は、大会中、沿道の声援にちょこちょこリアクションするなど、面白いキャラクターを発揮。箱根を卒業した彼の次の走りも楽しみです。