「なんだ、ここ。わけわからねえ! グハハハハ!」
アジアにありそうなB級の商品や光景をみると「グハハハハ」と笑う癖があるS君は、初めてその店に入った瞬間に笑いはじめました。僕は未知との遭遇にただ口を開けて「すげえ!」と驚いたのを覚えています。
日本ではないようなB級な内装、飛び交う外国語、ピカピカと光るゲーミングライト、そして音楽に合わせてステージ前で踊る店員と客、何もかもが常識外。異国飯屋(在住外国人向けのガチな外国料理屋)の意外さに驚く経験は何度もありましたが、その店はあまりにもぶっ飛んでいて思考停止ですよ。ここはまさにホームラン級のガチな外国料理屋。
最近来日したフィリピン人も落ち着けるお店
店の名は、フィリピン料理屋「Cindy's restaurant(シンディーズレストラン)」。羽田空港や川崎に近い庶民の街、東京・蒲田にあります。おしゃれディープな赤提灯が連なるこの街は、中国、台湾、タイ、インドと面白い外国料理屋が多いのですが、「Cindy's」は異国飯屋好きの僕らにとりわけ直球で刺さったのです。
ガチのフィリピン料理屋なので客はフィリピン人がほとんど。かつてフィリピンパブ嬢やミュージシャンとして来日した日本在住歴の長いフィリピン人や、最近レストランの近所の病院の介護スタッフとして来日したというフィリピン人もいます。「Cindy's」は昔からいるフィリピン人も最近来日したフィリピン人も落ち着ける場所なのです。
「Cindy's」の初見のインパクトがあまりにすごかったので、その後も何度か行くようになりました。どうも普段はフィリピン料理を食べたりカラオケを歌ったりする場所なのですが、週末は食べ放題になり、しかも夜8時くらいからダンスタイムがはじまるのです。DJが音楽を流し始めると店員も客も踊りだす。食べ放題レストランの概念が壊れていくわけですよ。
ダンスは「ズンバ」と呼ばれるフィリピンで人気のエクササイズ系ダンスで、若い客も年配のおばちゃん店員もキレッキレで踊る。「どんだけ練習したんだよ、どんだけ踊ったんだよ」と思うほどの一糸乱れぬ動きなんです。
私は店員のおばちゃんに引っ張られて踊ったとき、最初はついていけませんでした。でも続けていると案外慣れてくるもので、今ではそれなりにキレのあるダンスができるようになった気がします。