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 多くの日本人にとって中華料理のイメージはあるし、ベトナムだったらフォー、タイだったらガパオライスやパッタイ、インドやネパールなら現地にはないけれどナン・カレーセットが思い浮かぶ。

 でもフィリピン料理はなんだかわからないという人がほとんどだと思います。フィリピン料理目的で店に行く日本人はまだまだレアなので、フィリピン人には驚かれ喜ばれるんですよ。

様々な国の食文化が混在

 料理名がアルファベットで書かれ、茶色の料理ばかりの写真付きメニューを見ても、みんな最初は何がなんだかわからず固まります。「フィリピンで人気の料理『アドボ』ってなんだよ。聞いたことないよ」となります。いいですねえ、これぞ疑似海外旅行体験ですよね。

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 おそるおそる食べてみると、フィリピン料理はうまいんですよ、これが。ガチ中華は中国の東北出身の人々による料理が多く、中国南方の広東省や福建省とはだいぶ違って辛めです。

 フィリピン料理の場合、むしろ辛さはマイルドで中国南方の味に近い。「パンシットカントン」という焼きそばや「ルンピアシャンハイ」という春巻きもあります。地理的には台湾とインドネシアに挟まれている国なのでインドネシアのような料理もあるし、デザートはかつてスペイン領だった影響でスペインの食文化も混ざっています。

「これまで食べたことがないから味の形容はできないんだけど、食べやすくてすごく美味しい」というのが僕が連れて行った知人友人のフィリピン料理評です。こんな料理が身近にあるのだから、体験しないともったいない。

知らないともったいないくらい日本人の口に合い、美味しいのだ

他国のガチ外国料理屋にはないおもしろい店が多数

 加えてフィリピン料理屋には「おいしいかどうか」という評価軸だけではなく、「おもしろいかどうか」というレストランとしては斜め上の軸が存在します。私が一番好きなのは「Cindy's」ですが、歌のステージもある食べ放題の店「Going」(千葉・八柱)や、商店の店舗外でフィリピン式焼肉「イナサル」を提供する東南アジアの旅先にありそうな店「カイビガン」(愛知・北名古屋)など、他国のガチ外国料理屋にはない一癖も二癖もある、いるだけでおもしろい店が結構あります。

名古屋池田公園「カイビガン」。このようなほしいのをもらう食堂が各地にある

「なんか店に斜め上の面白いイベントや仕掛けがあるのではないか……!」

 今年も異国飯屋の開拓をしながら、フィリピン料理屋にはそんな期待を抱いて店にお邪魔しそうです。

写真=山谷剛史

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 著者の山谷剛史氏の最新刊は、東京や大阪、愛知などを舞台に、スマホを片手に外国人コミュニティを探し出し、外国人ばかりの店で料理を食べて買ってお祭りに参加する“ジェネリック海外旅行”の最強マニュアル『移民時代の異国飯』。星海社より発売中です!