沢 証拠として提出するものには、エコー写真や血液検査結果、病院の領収書、体外受精か人工授精か自然妊娠かといった、妊娠の経緯を尋ねる経緯書など、多岐にわたっていました。たまたま取ってあったから良かったものの、なくなっていたらどうなっていたのかと思います。
――そこまでプライバシーに踏み込んだものを提出しないといけないことにも抵抗がありますよね。
沢 そのわりに、領事館の人もよくわかってない感じでした。あまり例がないのでしょうね。私が証拠を揃えて提出しに行ったら、職員の人たちが「あの人だよ」って感じでザワついていました。
――受理されないと、お子さんの名前が戸籍に載らない、日本人とは認められないことになります。結果、どうなったのでしょうか。
沢 結局、審査に半年かかってようやく戸籍に反映されたので良かったのですが、もしこのまま認めてもらえなかったらどこまでも戦ってやる、という気持ちはありました。
年齢で線引きするのも時代に合ってないと思います。第2子、第3子の出産時に50代になる人もいるでしょうし、アップデートが必要ですよね。
「高齢育児」ならではの利点は?
――そんなまさかの事態を乗り越えられて、今お子さんは4歳、沢さんは55歳になりました。“高齢育児”の日々はいかがですか。
沢 元気な子どもを追いかけるのは大変ですが、自分としては毎日がすごく楽しくて、この瞬間、瞬間を目に焼きつけておきたい感覚が強いです。
――高齢育児ならではのアドバンテージはありますか?
沢 若い時って、行ってみたい場所、やってみたいことがたくさんありますよね。たとえば海外旅行に行きたい、ミシュランの星付きレストランに行ってみたい、とか。いざ子育てが始まると、そういった自分の願望を諦める場面もたくさんあると思います。
私は50歳までにやりたいことはほぼ全部やってきたので、そういったストレスはありません。人生の経験則がある分、子育ても要領よくできている気もします。年をとると怒りに使う体力もないから、頭にくることもほとんどないですし。そういう意味で悪くないと思うんですけどね、高齢育児(笑)。
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