いまいちばん勧める本
『がんに効く生活』(ダヴィド・S・シュレベール/NHK出版)。32カ国で翻訳され、全世界で100万部以上のベストセラーになった本だ。
この本の著者は精神科医。アメリカ・ピッツバーグ医科大学の精神科の教授であり、一方で同大学に西洋医学だけでなく、東洋医学や民間療法もあわせて研究する統合医療センターを設立した。
著者は脳腫瘍と宣告される。宣告後の自分のありよう、家族にどのように伝えるか、周囲の反応はどうだったかなど、自らの体験をくわしく述べている。
脳腫瘍といわれたあと、著者はがんはどのように起こるのか、防ぐ方法はあるのかについて、世界中の論文を精査し、専門医に会いにいく。そして、これらの検証の結果、生じてしまったがんに効く生活を提案しているのである。
たとえばWHO(世界保健機関)の事務局長が「がんの80%までは、生活様式や環境など、外部要因によるものと思われる」(国際がん研究機関の報告書の序文より)と述べているが、実際、胃がんを例にとると、食事が変化したことにより、その数は急速に減っている。
本書ではがんになったら、食事にはどのような注意を払えばいいのか、それが具体的に記されている。
うれしいことに著者は「以前から、日本の伝統的文化は、健康的な生活を送るうえで、世界中のひとつの基本になる」と述べている。
文化、とくに食文化に、わたしたちはもっと自信を持ってもいいだろう。しかし、あくまでも伝統的な食事であることを認識する必要がある。
食事以外にも、こころの持ち様などにも触れ、じつに示唆に富んでいる。
がんにかかり、もう治療法がないといわれたときほど大きなショックはないだろう。この本では、そうした状況でもそれまでの人生より輝く日々を送り、こころ穏やかに最期を迎えることができると説き、その方法も教えてくれる。
もちろん、それは特殊で特別な方法ではない。考え方を変えれば、誰でもできることなのだ。
がん患者だけでなく、その家族にもこの本をぜひ勧めたい。
がん患者に教わった本
「元気の出るがんの本」というシリーズを作りたいと思い、ある乳がんの患者に会ったとき、彼女に勧められたのが、『生きるための乳がん』(リリー・ショックニー/三一書房)である。
著者は、アメリカの乳がんセンター所長で看護師、そして乳がんの経験者だ。訳者も同じく看護師で乳がん経験者。最善の病院、医療者に出会うためにどうしたらよいかが、正確に書かれている。
どの病院でどの医師のもとでどんな治療を受けるか。訳者はそれを探すのに3週間かけたとある。乳がんは、進行が遅い。だから、納得いくまで十分調べることができる。この本を勧めてくれた彼女も3人の医師を訪ね、納得いく治療を見つけ、治療を受けて、いまや普通の生活を送っている。
乳がんを特別に取り上げたのは、なかなか医師に相談できず、そのうちに進行して、「なぜもっと早くこなかったの」と言われるケースが多いと聞いたからだ。乳がんが心配な人は、この本をすぐに買って読んで欲しい。家族に打ち明ける勇気、医師に質問する勇気が生まれてくる。
セックスについても書かれている。乳がんになったあと、パートナーとの性生活はどうすればいいのか。こうした情報は少ないだけに、参考になるだろう。