紆余曲折を経て「かつをぶし池田屋」に鰹節・サバ節・宗田節のすべて枯れ節をバランスよく配合してもらった「浪子そば」用の混合節を供給してもらえることになったという。その後、徐々に売上げが伸び、つゆを飲み干す方も増えたという。「本格的なまろやかな出汁の効いたつゆを味わってほしい」と岡田さんはいう。
最後に三浦半島の牧場から毎日取り寄せている生乳で作るソフトクリームを少しだけ試食させてもらった。濃く甘さは控えめで洗練された味であった。岡田さんにお礼を言いモーモーズを後にした。
老舗そば屋は家族や暖簾分けで味を継いでいく。それに対し、大衆そば・立ち食いそば屋の醍醐味は、創業者の想いや人の縁で味が繋がっていくことである。偶然が素敵な味を生み継代していくこともある。岡田さんの「浪子そば」の味への想いと人の縁がつなぐ物語はこれからも続いていくのだろう。今回の訪問はそんなことを再認識させてくれた。いい訪問だった。
「浪子そば」を後にし、海岸を散策
さて、まだ時間は昼過ぎだ。先輩と2人で「浪子そば」の名前の由来となる浪子不動と不如帰の碑を見に行くことにした。駅からすぐに逗子海岸に到着する。ヨットやウインドサーフィンが穏やかな波間に浮いていた。その先にきらめく波光が沖まで続いていた。穏やかな海に不如帰の碑が浮かんでいた。
北海道を旅して待合(駅)そばを好んでいた徳富蘆花の人気小説「不如帰」の舞台が逗子だったことや、そのヒロイン「浪子」の名にちなんで、浪子不動と呼ばれるようになったとか。「浪子そば」はいい名前である。
その後、急峻な浪子不動ハイキングコースから披露山公園を抜けて帰路についた。今度は名越の切通しを越えて「浪子そば」を目指すことにしよう。
INFORMATION
「浪子そば」
住所:神奈川県逗子市逗子5-1-6
営業時間:10:00~19:00