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「極端なニーズを持つ女性」に絞るのがポイント? 35歳大学教授がマーケティングの論理を使ってアプリ婚活してみた

『大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について。』より#1

2023/01/26
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 だとすれば、実は当たり前のマーケティングの発想で「中庸な婚活女性のニーズ」を割り出し、そこをターゲットにマッチングの申込みを行うことは、実は合理的に見えて多くの男性と競合する非効率的な戦略なのかもしれない。

 逆に、「極端なニーズ」に自分を当てはめてアプリ婚活を行えば「満たされない極端なニーズを持つ女性」とマッチングできるのではないだろうか? 10年ほど前に一世を風靡したブルーオーシャン戦略の婚活バージョンだ……!

 それでは、アプリ婚活でブルーオーシャン戦略をどうやって実行すればよいだろうか。そう考えながらアプリをいじっていると、自分が全く利用していない機能として「サークル」というものがあった。

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「ダイビング好き」とか「フィットネスLove」のようなサークルが設定されていて、そこに登録しておくと、自分の趣味趣向が合う人と出会いやすくなるという機能だ。

「サークル」には趣味だけではなく、「専業主婦希望」とか「看護師と結婚したい」といった結婚相手に求める条件でサークルが存在している。なぜこれに早く気付かなかったんだ。

 自分の趣味や結婚相手に求める条件に合致するサークルに登録するのが通常の使い方であるだろうが、実はこの機能こそがリードユーザー・マーケティングの手法で応用できる活路ではないだろうか?

 そこで、あえて登録者の少ないサークル=極端なニーズを持つ女性が存在するサークルに注目してみることにした。その中でも私が属性として該当し、有利になりそうなサークルが、「逆年の差婚OK」と「大学院卒業以上」のサークルであった。

 双方とも、登録者が少ないのはある意味納得である。2019年度の人口動態統計年報で初婚者のうち女性が年上の夫婦が占める割合は24.2% だ。更に、大多数の男性は、女性の方が学歴が高い場合、交際が成立するのが難しいらしい。なんだかな……。

 女性が浪人することなく大学院まで進学した場合、修士だと24歳、博士だと28歳以上となる。大多数の同年代の男性にとって、「年齢」「学歴」という点で「難しい」女性となってしまうに違いない。ということは、国立大学で博士課程を修了で博士号持ちの私が、逆年の差婚を受け入れてしまえば、そこにはブルーオーシャンが広がっている可能性もあるのではないだろうか。希望的観測すぎるか?

 そう考えて「逆年の差婚OK」と「大学院卒業以上」のサークルに登録し、優先的にそこに登録している女性にマッチングの申込みを図ることにした。

たった一人に向けてチューニングする(2022年5月15日)

 新しいプロフィールページを作成し、マッチングの申込方法を変えてから1 ヶ月が経過した。

 写真を差し替えてから目に見えてPV数が増え始め、現在は安定して一日300人前後のPV数を記録するようになった。

 やっとマッチングも数件成立するようになり、4P/4C(※1)、STP(※2)、リードユーザーといったマーケティングを導入したアプリ婚活は、成功に近づきつつある手応えを感じ始めている。

 一方で深刻な問題となっているのが、マッチング成立後のメッセージのやり取りが続かず、マッチングを解消されるケースが続いていることだ……。

 マーケティング論的に言えば、プロモーションに成功して商品の認知度が上がり、顧客が実際にお店に来て商品を手にとって見てくれるところまで来たが、実際の購買行動にまではつながっていない、という状態である。例えていて悲しくなるが。

 だとすれば、この先に必要なのは、私に興味を持ってマッチングしてくれた女性が、実際に会ってみよう、交際してみようと決断してもらうためのプロモーション活動であるだろう。