2016年から2021年まで、6年連続で人口増加率全国トップを維持し続けた「千葉県流山市」。かつては数多ある東京のベッドタウンのひとつにすぎなかったが、近年は「保育の楽園」として首都圏の子育て世代から注目を集めている。流山市ではいったい、どんな取り組みを推し進めているのか——。

 ここでは、流山市在住30年の経済ジャーナリスト・大西康之氏が流山市の魅力と秘密を綴った『流山がすごい』(新潮社)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目を読む)

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利用者がどんどん増える流山市の「送迎保育ステーション」

 月曜日午前7時のおおたかの森駅。東武アーバンパークライン(東武野田線)と、つくばエクスプレスが交わるコンコースで人の流れを観察する。制服を着た園児の手を引いたお父さんお母さんが、改札とは反対側のビルに続々と吸い込まれていく。

流山おおたかの森駅前の景観 ©AFLO

 数分すると親だけがビルから出てきて、足早に改札に向かう。園児の制服や鞄がバラバラだ。同じ保育所に預けているわけではないらしい。

 早朝に親子が向かったのは流山市が市内の社会福祉法人に委託して運営している「送迎保育ステーション」。仕組みはこうだ。

 午前7時から7時50分の間に、駅前ビルの3、4階にある送迎保育ステーションに子供を連れていく。午前8時、市内各所の保育所に通う子供達がルートごとに送迎バスに乗り込み、9時までに全員が自分の保育所に送り届けられる。

 午後4時、送迎保育ステーションを出発したバスが市内各所の保育所を回って子供達をピックアップし、午後5時までに送迎保育ステーションに送る。仕事帰りの親は午後6時までに迎えに行き、家路につく。

 流山市民は1日100円、月額最大2000円でこのサービスを受けられる。送迎保育ステーションは通常の保育所も併設しており、お迎えが遅れても午後7時までなら100円、午後8時まででも30分500円の追加料金を支払えば延長保育で預かってくれる。

 流山市がこのサービスを始めたのはつくばエクスプレスの開通から2年後の2007年。最初はバス2台で始めたが、利用者がどんどん増え、翌年には南流山駅にももう1つの送迎保育ステーションができた。今は8台のバスが走っている。流山市在住なら1歳~5歳の誰もが利用できる。ピークの登録者は200人以上。2018年には延で5万人弱が利用した。その後、コロナ禍で利用者は減ったが、感染拡大が収まれば再び増えるだろう。

 2022年の5月、筆者は都内の会合で知り合った人事コンサルタント会社で役員を務める女性とこんなやり取りをした。