映画出演は「脱ぐことよりも、現場が怖かったですね」
――その後に、石井監督から「ヌードの夜」のオファーをもらうんですか?
佐藤 実はそれは事務所でなく、竹中直人さんがきっかけなんです。
お父さんがいなくなってから、家に帰るのが耐えられなくなって、一人で下北沢を飲み歩いている時期があったんです。下北沢って当時いろんな人がいっぱいいたじゃないですか。プロデューサーとか、そういう人に出会えたらいいなとも考えていて。
あるお店の女将さんが「この子もグラビアやってるんだって」と店で飲んでいた竹中さんに紹介してくれて、その後、飲みに連れていってもらうようになりました。
ある時、竹中さんから「今からちょっと三宿に来れる?」と連絡があって向かったら、そこに石井監督がいて。「事務所にあんなに企画を出しているのに会えなくて、竹中くんの誘いだったら会えるんだ」と言われました(笑)。
そこでこの役をやってほしいと「ヌードの夜」の台本を渡されたんです。事務所に見せる前に全部読みました。この役をやるのは怖いけれど、やりたい、と思って事務所に相談して出演することになりました。
――ヌードになることに対して躊躇はなかったんですか?
佐藤 ヌードになること自体は怖くなかったです。母にも「自分で好きでやるのならいいんじゃない」と言われました。脱ぐことよりも、現場が怖かったですね。竹中さんや、大竹しのぶさんが出演されていましたし、これまでドラマで演じてきた役とは役割、重要度が全然違いました。
現場ではずっと逃げ出したかったです。石井監督も「はい、ダメ。もう1回」と言うだけで、何が正解かもわからない。撮り直しになるとスタッフさんや竹中さん、大竹さんを待たせることになるのでプレッシャーで……。
でもその追い込まれた精神状態が、逆に演じる役とリンクしてくる部分はありました。大竹さんは優しくて「こっちにおいでよ」と言っていただいたんですが、馴れ合った自分の心が出ないように、あんまり仲良くしないように距離を取ってました。
――佐藤さんの「ヌードの夜」での演技は非常に評価され、2010年のヨコハマ映画祭最優秀新人賞も受賞しました。映画でヌードになったことで、その後の仕事でもヌードを求められるようにはなりませんでしたか?
佐藤 グラビアではそうでしたね。ヌードをやったから服には戻れないじゃないですけど。私はそういう風潮が理解できなくって。両方やれば良いと思ってるし。私的には一緒なんですよ。
それに服を着ているから脱ぐのが面白いわけだし、裸になっていたら脱いでもただの裸じゃないですか。そういう理解がない仕事はやっても意味がないなと思ってました。
写真=杉山秀樹/文藝春秋
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