突如、基本方針が決まる
経営改革プロジェクトが始まり、K氏を除く7人のメンバーは、精力的に検討を重ねました。4か月後、次のような基本方針が決まりました。
方針(1):老朽化した基幹業務システムを全面刷新する
方針(2):収益が悪化していた産業用エンジン事業から撤退する
方針(3):環境関連の新規事業を創造する
このうち(3)の新規事業は、長い目で見て必要だという認識が社内にあったので、問題なく決まりました。一方、(1)は大きな投資が必要になることから情報システム部が、(2)はリストラ対象になる産業用エンジン事業部が強く抵抗し、議論が紛糾しました。
ところが検討開始から3か月後、いきなり社長からこの3つの基本方針で進めるようにという指示が降りてきました。直談判してきたK氏に、強く決断を迫られたようです。
「社長に確認したところ、K氏からの働きかけを認めました。そして『君たちがなかなか決められないから、2人で決めたんだ』と言われ、プロジェクトリーダーである私の指導力不足を𠮟責されました」
会社側のプロジェクトメンバーは不満でしたが、社長が決めた方針に逆らうわけにはいきません。不承不承、3つの基本方針を具体化する作業に進みました。
4年経っても、結果はまったく出ず
プロジェクトメンバーは、3つの基本方針に沿って具体策を策定し、順次、実行しました。しかし、こうしてプロジェクト開始から4年が経った現在、どの方針もまったく成果は出ていません。
(1)の基幹業務システムについては、ITベンダーとしてS社を選定し、システムの構築を依頼しました。1年半後、計画通り新システムがリリースされましたが、ほかのシステムとの連携が悪く、バグが多発し、現場は大混乱。以前よりも業務効率が悪化しました。