2023年度税制改正大綱が発表された。今回の改正で話題になったのが贈与税、相続税に関する項目だった。
国は相続における税負担の公平性に着目し、贈与に対してこれまで以上に厳しい姿勢を打ち出したのが特徴だ。
生前贈与に対しても厳しい目が
日本の相続税は世界的にも最高水準のレベルにある。相続する遺産の額が6億円を超えると税率は最高レベルの55%に達する。ならば事前に贈与すればとなるが、贈与税についても贈与した金額(基礎控除後の金額)が4500万円を超えると税率は55%に達してしまう。
またこれまで相続前に贈与した財産であっても相続発生前3年間に行われた贈与については、相続財産額にカウントされてしまっていたのが、相続発生前7年間についてカウントされるよう改められ、生前贈与に対しても厳しい目を向けられることとなった。
つまり国としては、事前に贈与などしても無駄。相続でがっぽり税金をいただきますよ、という強い姿勢を打ち出したものと言える。唯一残されたのが年間110万円の贈与については、非課税とするものだけであり、これでは相続発生前に、資産の移転を行ってもあまり意味がないことになる。
「非課税枠設置の措置」の延長は?
いっぽうこれまで特例として認めてきた「住宅」「教育」「結婚・子育て」については、非課税枠設置の措置が期限延長されるのかにも注目が集まった。
これまで住宅取得資金援助に関しては、省エネ住宅であれば最大1000万円まで、それ以外では500万円までの贈与が非課税であり、期限は23年12月末日まで。教育資金贈与は子や孫に教育用として最大1500万円までの贈与が非課税。期限は23年3月31日まで。ただし子や孫が30歳になった時点で使い残しがあると、その分は課税されるというもの。結婚・子育て資金贈与は子や孫に挙式や披露宴、出産、不妊治療などの資金について最大1000万円までを非課税とするもので23年3月31日まで。ただし子や孫が50歳に達した段階で残額は課税対象となるというものだった。
だが今回の税制改正大綱では、これらの非課税措置について、教育資金援助については26年3月末まで3年間の延長、結婚・子育て資金贈与については25年3月末まで2年間の延長が認められたが、住宅資金贈与についてはなんと延長措置が講じられなかったのだ。