《俳句を真剣にやってみよう》と思ったのは、愛媛県で中学校の国語教員をしていたとき。/30歳を少し過ぎた頃、《百年後に、俳句は根腐れしているかもしれない》という危機感を抱き、俳句の種蒔き運動を始める。だが「俳句甲子園」という新たな試みが俳句界からバッシングを受け、「お前が夏井か!」と怒鳴られたことも。/熟年再婚した夫でありマネージャーでもある「ケンコーさん」に肺癌の診断が下される。/実妹が、再婚相手のユダヤ系アメリカ人の世界的チェリストを連れて、ニューヨークから帰国……。
『プレバト!!』俳句コーナーで人気の著者が、こうした悲喜交交の半生を綴った。
「テレビで見せる鮮やかな添削と解説、物怖じしない姿に、著者の来し方を知りたくて週刊誌連載をお願いしました。出会いを大切に、時に『ブレるな!』と自分に言い聞かせて逆境を乗り越えてきた人生に、一層惚れ惚れすると思います」(担当編集者の橘髙真也さん)
連載に書き下ろしを加えて纏められた本書は、著者の並々ならぬ俳句への思いも迸る。40代以降の女性からの反響が多いそうだ。
「とくに印象深いのは、胃癌の病状が急変したお父様を乗せた車を、きれいな雪が積もる畦道近くに止める場面です。著者の心に残る映像がまざまざと見えてくる、凄みのある文章は圧巻。涙が出ました」(橘髙さん)