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「鈍器で殴るくらいの文章を書きたいな、と…」作家・千早茜が直木賞受賞作『しろがねの葉』で描いた“闇の世界”

「鈍器で殴るくらいの文章を書きたいな、と…」作家・千早茜が直木賞受賞作『しろがねの葉』で描いた“闇の世界”

直木賞受賞・千早茜さんインタビュー

2023/01/21
note

ぱっと言葉を見つける練習

――それを言語化するにしても、「この光を表現するのにいい言葉が見つからない」なんてことはないのですか。

千早 それは普段からメモをとって練習しているので大丈夫です。私は映画を観ている時でもメモをとるんです。映画を観ながら、次のシーンに移るまでの短い間に、その場面にふさわしい表現をババババっと書きとめる。絵画のスケッチ、素描のようなことを文章でする感じです。それを繰り返していると、ぱっと言葉が見つかるようになります。

――そうでした、千早さんってメモ魔ですよね。今もノートを手にして見返したり、メモをとったりしながら話されていますし。さて、今回は史実も交えているので、物語の展開をそれに合わせるのも大変だったのでは。

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千早 先に年表を作り、そこに沿うように話を進めました。すごく幸運なことに、校正さんが偶然、鉱山マニアの方だったんですよ。その方がいろいろ資料を貸してくださったので助かりました。昨日は受賞の記念に、ご自身のファイルから大正、明治あたりの頃の石見銀山の風景を撮った古い絵葉書をくださいました。

©文藝春秋

――戦国時代末期から始まる、という設定は自然と決まっていったのですか。

千早 はい。江戸になって掘り方や構造が変わるところを書きたかったんですよね。技術も進歩して、間歩をもっともっと深く掘るようになっていく。それで肺病が流行ったのはもう少し時代が進んでからなので、そこだけはちょっと史実よりも早めの設定にしています。

男性社会の中で生きていく女性

――男性社会の中で生きていかなくてはいけないウメという女性の造形は、どのように立体的になっていったのですか。

千早 夫を3人持つ女性目線で考えているうちに、「あれ、それだと鉱山の中の描写ができない」と気づいたんです。鉱山は男性しか入ることが許されていないので。でも、子どもなら入ってもいいのではないかと思い、ウメの子ども時代から話を始めました。暗い穴に入りたがる子どもって、『不思議の国のアリス』のアリスみたいな、独立心が強くて好奇心が旺盛だろうな、と考えるうちにウメのキャラクターが出来上がっていきました。

――ウメは夜目が利くということで、その能力を活かして女性だけれど間歩で活躍するんじゃないか、とちょっと期待しましたが……。

千早 みなさんそう思いますよね。でもそうはいかないぞっていう。だって、今だってめちゃくちゃ才能があるのに会社を追われる女性っていっぱいいるじゃないですか。