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――ウメは鉱山の男性社会に抗い、やがて受け入れる。でも、諦めたわけではなく自分のやり方で抗っていく。ということを昨日の記者会見でも話されていました。

千早 今までの私だったら、抗って怒ってぶち壊して終わり、みたいな話になるんですけれどそうはならなくて、この作品でちょっと大人になれたと思いました。ウメだって男性全員が憎いわけじゃなくて大事に思っている相手もいますし。悔しくても抗うだけじゃないだろう、という気持ちになれました。

主人公が出会う、個性豊かな男性たち

©文藝春秋

――ウメが出会う男性たち、みな個性豊かですよね。子どもの頃に家族と別れたウメを助けてくれ、一緒に暮らす喜兵衛は銀の気が視えると謳われた山師で……。

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千早 今回はエンタメを意識したのでキャラクターを立てました。喜兵衛はウメよりずっと年上で、ウメと同年代の隼人は喜兵衛に対抗心があって、後に出会う年下の龍は仏さんみたいに達観していてというように。

 ウメは喜兵衛を最初の夫と思っていますが、2人は実際に身体の関係があるわけじゃない。喜兵衛はウメに対して下心があるわけではないけれど、でも2人の間には特殊な愛情があって互いを尊重している。今回はそうした名前のない関係性をちゃんと物語に入れることができたと思いました。というのも、ずっと思っていたことがあって。『男ともだち』の時に、主人公の女性と男ともだちのハセオとの関係について、「男は下心なしに女性にこういうことはしない」「こんな関係性ないよ」という声もあったんですよね。それは私の書き方が描き方が未熟だったところもあると思います。今回、自分の筆力が追いついたと思えて嬉しいです。

銀(しろがね)色のブーツを履いていた千早さん ©文藝春秋

――喜兵衛の従者のような存在、ヨキもいいですよね。

千早 あ、ヨキですか。誰がいいかと訊くと結構意見が分かれるんです。私は龍かな。

――え、喜兵衛やヨキや隼人に比べて出番が少ないのに?

千早 私は花とか美しいものをくれて自分をずっとお姫様のように扱ってくれる男性が好きです(笑)。刊行した時に村山由佳さんと対談させてもらったのですが、村山さんもヨキがいいと言っていました。新井さんは他には目もくれず「喜兵衛」と言っていましたね。