――『地図と拳』での直木賞受賞、おめでとうございます。昨夜(1月19日)の記者会見では感謝を述べた後「さっさと終わってお酒飲みたい」とおっしゃっていましたね。

小川 昨日はあのあと深い時間まで飲んで、帰って、いただいた連絡に返信をして、寝て、起きて、ここに来ました。完全に二日酔いです。

――小川さんは前から「お酒の味がわからない」って言ってますよね。それでも飲むのは好きなんですか。

ADVERTISEMENT

小川 酔う、という状態に対しては一定の価値を認めているというか(笑)。

受賞は書いた小説に対するボーナスのようなもの

©文藝春秋

――『地図と拳』は選考会満場一致で山田風太郎賞も受賞されているし、読者からの前評判も高かったですよね。ご自身でも受賞の予感があったのでは。

小川 評判とかはあまり関係なかったです。ただ、書いた側の感覚として、受賞しても「びっくりした」というつもりはなかったという感じですね。直木賞の候補になった作品ってどれも面白いのが前提で、どれが直木賞のやり方のなかで強いか弱いかというだけだと僕は思っていて。で、今回の僕の作品はチャンスがあるんじゃないかな、とは思っていました。別に直木賞をとるために書いたわけではないんですけれど。

――今回の会見でも、『ゲームの王国』で山本周五郎賞を受賞された時の会見でも、「ひとごとのように感じる」とおっしゃていました。それは、賞をとったからといって作品の中身が変わるわけでもないし、みたいなことでしょうか。

小川 そうなんですよね。昨日は友達から「すごい」「すごい」というLINEがきたりもしたんですけれど、僕の本がすごいんだったら、去年の6月に刊行した時に「すごい」の瞬間は来てない? みたいな(笑)。受賞は嬉しいですけれど、この作品を書いたことのほうが自分の中でははるかに大変だったんです。直木賞は自分が書いた小説に対するボーナスのように思っています。

©文藝春秋

――本日、今年の本屋大賞のノミネート10作が発表されましたが、小川さんの『君のクイズ』も入っていましたね。

小川 『地図と拳』と『君のクイズ』がそれぞれどういう人に届くのかを考えた時、すごく願ったり叶ったりというか。僕の本を多くの読者に読んでいただけるチャンスをもらえる形になりました。