文春オンライン

『電波少年』も『ボキャ天』も認めず…「あれはお笑いじゃない」ロンブー、ココリコ世代の“東京吉本芸人”たちのプライド

『東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年』より#2

2023/02/23
note

ロンブー人気と時代の空気

 極楽さん、ココリコが多忙になり、劇場にほぼ出演できなくなってきた頃、次に続くスターを!ということで劇場がユニットイベントを始めました。

 ライブ名は「ON EVERY FOUR」と「ON ALL FOUR」だったと記憶しています。メンバーはロンブー、なかよし、チープスープ、ウルパラ、いんちき番長、ペナルティ、ツインカム、おかしな2人で、4組ずつに分けたのですが、誰がどちらにいたか記憶が定かではありません。

 2時間で各自30分ずつ担当するミニ単独のような構成です。自分はいんちき番長とツインカムの担当だったのですが、どんな企画をしたかほとんど覚えていません。それほど記憶が曖昧なのに、ロンブーがやったある企画だけは鮮明に覚えているのです。

ADVERTISEMENT

 ロンブーは「イスを作る」というのです。他の芸人は数日かけて打ち合わせして、ライブに挑んでいる。しかし、ロンブーは打ち合わせなしのノープランだというのです。材木、ノコギリなどが用意された舞台にロンブーが登場します。

「これどこに使うの?」

「それ切ったらダメじゃねえのか?」

 ただ雑談してイスを作り続ける二人。ネタっぽいことは何もやっていないのに、会場は笑いが絶えません。30分で舞台が真っ暗になり、ロンブーとお客さんの「あ~!」という声とともに強制終了。そのあとに起こる大爆笑と拍手。

ロンドンブーツ1号2号・田村亮さん ©文藝春秋

 このライブで「ライブはその場の空気をつくること」だと痛感しました。ただネタをやるだけではない。来てくれたお客さんをいかに楽しませるかが勝負なのだと。ネタとは別で考えなくてはならないことがあるのだと。

 ロンブーはその場の空気をつくる天才だと思いました。極楽イズムを最も受け継ぎ、実践している芸人だと思っています。

 個人的な見解になるのですが、この時代に人気になったロンブーとPUFFYって、タレントイメージが似てるよなあ~と思うのです。

 時は世紀末。1960~80年代生まれは「ノストラダムスの大予言」を経験しています。子どもの頃に「1999年に地球が滅びる」と考えたのです。しかして迎えた世紀末、地球が滅亡する気配はありません。社会学者・宮台真司氏は「終わりなき日常を生きよ」と言いました。一生懸命はなんかダサい。ずっと終わらない世の中なら、肩肘はらずにダラダラ生きるのがかっこいいというイメージです。この二組はその象徴的な存在だと思うのです。

 時代の空気もロンブーを求めていたのではないかと思うのです。

東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年

山田 ナビスコ

宝島社

2022年11月26日 発売

『電波少年』も『ボキャ天』も認めず…「あれはお笑いじゃない」ロンブー、ココリコ世代の“東京吉本芸人”たちのプライド

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー