……そんな内容だったっけ?と、私はいままで目にした『ワタサバ』のWEB広告の一コマたちに、思いを巡らせた。網浜さんのズレた発言にイラッとしたり、網浜さんがお灸をすえられて笑うことはあっても、彼女を好きになる要素は無かったはずだ。
しかし、どうしたことか。ドラマを2話、3話……と見ていくと、たしかにそのカウントダウン通り、網浜さんのことを少しずつ、少しずつだが、好きになっていく私がいた。
主演・丸山礼のちょっとすごい「アドリブ力」
その要因の一つに、網浜さんというキャラクターを、笑われるヒロインから“笑わせるヒロイン”へと、転換させたことが考えられる。
原作では、自サバ女・網浜さんの肥大した勘違いっぷりに笑い、いつもは頭を悩ませている周りの人々が、主役のはずの彼女をギャフンと言わせるところに痛快さがあった。いわば『痛快TV スカッとジャパン』のような構造になっており、自サバ女とのバトル漫画として売り出していたのである。
一方のドラマ版は、主演の丸山持ち前のギャグセンスが加味され、イタいけれど、ユニークな網浜さんに仕上がった。
ときには、丸山自身のエピソードを取り入れたり(原作ではハダカデバネズミに似てるといわれる場面を「ロバートの秋山に似てますね」に変更している)、丸山主導のアドリブを採用し、笑われる前に“自ら笑いを取りにいく”ファニーな網浜さんに変化させている。どこからがアドリブなのかは分かりやすく、共演者たちが耐えきれずに笑い出してしまう場面もある。原作のドロドロとした雰囲気が、全体的にポップで和やかになっているのだ。
不愉快系ヒロイン・網浜さんを正体不明のモンスターにせず、その人間性にフォーカスしているのも、ドラマ版の特徴だ。第2週目の「人材開発室」編では、あの網浜さんがツッコミ側に回っていたりと、意外とまともな感性も持ってるんだ……と見直してしまう場面も。馴染みのスナックのママ(山田真歩)とのシーンでは、網浜さんの本音も聞けたりもする。
「世の中はさ、生きたいように生きてる人なんてほとんどいないじゃん」
「みんなロボットみたいなもんだよ」
「どいつもこいつも上辺ばっかで疲れちゃった」