テキ屋は儲かるのか?
ランニングコストや維持費の話が出たところで、“テキ屋の儲け”について書いてみましょうか。他人の稼ぎは誰しも気になるもの。とくにテキ屋のような特殊な業態だと興味関心もひとしおだと思います。
私の父が独立に際して、わたあめとあんず飴の商売を選んだのは、前述の通り、元手が少なくて済むからでした。当時、私はあんず飴を1本100円で販売していました(その後、200円になり、2023年からはついに300円で売り出すところも出てきました)。儲けを出すためには、原材料費は価格の1割程度か、それ以下にしたいものです。そのほか、商売の場所への交通費、そして庭主(主催者)へのショバ代(場所の利用料金)なども考慮しなくてはいけません。
実は、この経費こそが、父が一本になった際、わたあめとあんず飴の2つの商売を“同時に”始めた理由でした。
「あんず飴1本を売ってナンボ」という商売の仕方は悪くはありませんが、1本100円という安さですから、それだけだけではなかなか利益を出すことはできません。2つの商売を同時に行い、全体の売上があって、そこから原材料費や交通費などの諸経費を引いたうえで、「どのくらい残るか?」という考え方をしないと、家族5人が暮らしていくだけの儲けは出せないわけです。
儲けは、祭りの規模も関係してきます。1日の開催で50万円の売上が見込める祭りと、3日間にわたって開催されてトータルの売上見込みが75万円というお祭りなら、考え方は変わってきます。後者は前者よりも金額としては1・5倍稼ぐことができますが、3日かけてのもの。金額そのものは少なくても利幅は1日だけの前者の方が大きいのです。このような点をどう判断するかは、センスが要求されるところです。
父の場合、1日の開催でお呼ばれし、義理で断れない場合は、あんず飴よりも利益が大きいわたあめだけで商売をすることも少なくありませんでした。
いまから約30年前、それまで1本100円だったあんず飴を、止むに止まれぬ事情から1本200円に値上げしました。この値上げで利幅は大きく増えましたが、高くなったことでお客さんが離れてしまうおそれもありました。
そのときに設置したのが、“ルーレットマシン”です。電動式の機械で1、2、3、5、10の数字が振ってあり、購入時にお客さんに押してもらって止まった数字の分だけあんず飴をもらえるというものです。このルーレットはけっこう受けが良く、売上を落とさずに済みました。
では、私の商売であるスイネキは、どのくらいの売上があったのでしょうか。
祭りの規模によって変わりますが、平たく言うと、だいたい1日あたり3~5万円というところ。規模の大きな初詣などになると、10万円単位の売上が見込めました。
よそ様の商売については分かりませんが、聞くところによると、ある程度の規模の祭りなら1パック500円の焼きそばが300パック以上は売れるのだとか。たこ焼きやお好み焼きといったネタも、だいたい同じくらいの売上があるそうです。
ひとつ言えるのは催し物次第で、売れ行きは変わるということでしょうか。
たとえば、花見や花火大会などでは座って食べることができるので、焼きそばやお好み焼きなど、お箸を使って食べるものがよく売れます。逆に初詣など人が流れていく場では食べ歩きできる、あんず飴やわたあめが多く出るものです。