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テキ屋は顔をつなぐことが大切

 この庭主には、それぞれ縄張りがあります。その縄張りの中でテキ屋が勝手に商売をすることは御法度であり、まずは面通しが必要になります。組織の場合は親方が庭主と話し合うようですが、一本の場合は個人的にお伺いを立てなくてはなりません。

 そのとき、父のように在籍していた組織の親方を通じてお伺いを立てることもあります。父の場合は一本になる旨を親方に伝えたところ、「それじゃあ各庭主さんに義理を通さないとな」と言われ、一緒にあいさつ回りをしてくださったそうです。

「うちの高里がこのたび一本になります。我が家同様、どうぞ宜しくお願いします」

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 そういった感じで親方が庭主さんにお願いすると、多くが「親方に丁寧に挨拶されたからには畏まりました」となります。そして、その庭主と兄弟分の別の庭主にも「高里が一本になった」と伝わり、商売ができるショバが広がっていくというわけです。このとき、父は改めて「テキ屋は顔をつなぐことが大切」と痛感したそうです。

 このような面通し(挨拶)を終えると、祭りがある時にそれぞれの庭主から連絡がくるようになります。そうしたら、祭りの開催日に訪ねていく……というのが商売の流れになります。

家族でテキ屋をやっていました

高里杏子

彩図社

2023年1月20日 発売