変な番組に遭遇すると心が躍るのがテレビっ子の性(さが)。フジテレビの深夜に3週にわたり放送されていた『City Lives』はそんな番組のひとつだ。

「こんばんは、髙嶋政宏です」と登場したのはもちろん髙嶋政宏本人。『生命のドキュメンタリーLiVES』というドキュメンタリー番組のナビゲーターらしい。彼は「今週から3週連続で取り上げるのは、みなさんもよく知っている動物。そう、『街』です」と語りだす。「街」はクジラに匹敵する知性と数平方キロメートルに及ぶ巨大な身体を持つ、世界で一番大きな動物だというのだ。「街」は自らの一部を擬態させた人間そっくりの「疑似住民」を抱えて生きているのだが、その「街」に住む唯一の本物の人間に密着するという設定のモキュメンタリーSFドラマなのだ。

髙嶋政宏 ©AFLO

 カメラで密着中も「街」は“成長”しており、建物や電信柱がニュルッと生えるようにできたりする。そんなVFXを駆使した映像は不気味な味わいながら圧巻だ。第1話の主人公の高城準(広田亮平)は、そんな「街」を保護・観察する都市型生物保護機構職員。だが、「街」とまだ打ち解けられておらず、時折、疑似住民に威嚇されたり、寝ている部屋に室外機を擬態されたりするといった「街」からの嫌がらせを受けてしまっているというのが、懐かないペットに悪戦苦闘する飼い主のようで面白い。街の表面には、呼吸のため無数の「呼吸孔」があるとか、出来たばかりの擬態物は温度が高くやわらかいといった無駄に細かい設定も楽しい。「街」は近くにいる人間の記憶を読み取って擬態するため、高城の思い出の風景が再現されているという生態が後から効いてくることにもなる。

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 ある時、人間でいうと24~25歳だというこの「街」の中に高城が「エラー」と呼ぶ腫瘍が見つかる。それを彼が除去しようとするのだが、デリケートな場所のようで近づくと嫌がる「街」は「止まれ」の標識を擬態させて彼の行く手を阻む。そんなとき、「街」に新しくマンションのような建物ができているのを発見する。その一室は女性が住んでいたような部屋。飾られた写真は、どうやら彼と過去に何かあった女性のもののようで、それを見て彼は、心が大きく動くのだ。「街」の生態の設定を活かした作劇が秀逸だった。

 モキュメンタリーは“不穏さ”を推進力として視聴者を惹き付ける作品が多い。事実、『City Lives』もそう。だが、最初は不気味に感じていた「街」が、時間が経つに従って本当の動物のように可愛らしく見えてくるから不思議だ。高度な映像表現とぶっ飛んだ設定の中に、生き物同士のコミュニケーションの機微が描かれた、どこか温かみのある“変”な作品だった。

INFORMATION

『City Lives』
フジテレビ系 放送終了
https://www.fujitv.co.jp/b_hp/City-Lives/index.html