いまでこそ、すっかり首都圏の交通ネットワークの大動脈として定着した東京湾アクアライン。が、かつてはあまり評判が良くなかった。

 そもそも超のつくほどの難工事で、総工費は1兆4000億円というとてつもない数字。それに、1997年の開通直後は通行料の高さもあって、あまり交通量に恵まれなかった。2001年には太田誠一自民党行革推進本部長が「20世紀後半の3大バカ事業」と手厳しく批判した、などということもあった。

 そんなわけでなかなか苦しい船出だったアクアラインだが、2009年に通行料が普通車800円に値下げされたことで、交通量が爆増。三井アウトレットパークの開業などもあって、いまや開通直後の7倍近い交通量になっているのだ。

ADVERTISEMENT

 そしてそのアクアラインが結んでいるのが、神奈川県の川崎と千葉県の木更津である。

東京から特急で約1時間…“国道16号のほぼ終点の町”「木更津」には何がある?

アクアラインが開通する前の「木更津」は…

 アクアラインが開通する前は、木更津なんて遠い遠い房総の果て。東京から電車で行く場合は特急に乗って約1時間。クルマで、と思ったらとてつもない渋滞に巻き込まれながらの途方もない旅になってしまう。それがアクアライン経由ならば30分とかからないのだから、まあとにかく便利なアクアライン、というわけだ。おかげでずいぶん、木更津が近い町になった。

今回の路線図。東京から電車で行く場合は特急に乗って約1時間、横浜とは“反対”の位置にある「木更津」

 木更津という町に対するイメージは、どんなものだろうか。だいたいが、『木更津キャッツアイ』だとか、氣志團だとか、そのあたりからのイメージということになろうか。こういってはなんですが、つまりはあまりお上品ではないというか、ヤンキー気質というか、そういうことになる。

 ちなみに、木更津は首都圏の外縁をぐるりと回る国道16号の事実上ほとんど終点の町だ。横浜を起点に、町田、八王子、入間、大宮、野田、柏、千葉などを通る国道16号。いわゆる“マイルドヤンキー”などと呼ばれる人たちが多く集まる道だとかで、あれこれ注目されたりもする。木更津は、そういう道の終点であり、房総の港町というだけではない背景を抱えているような気もする。

 ともかく、今回の舞台は木更津である。すっかりアクアラインが定着したいまとなっては、玄関口はおおよそ木更津駅とは言いがたいのかもしれない。が、まあこれまでのスタイルと変わらず、旅のはじまりは木更津駅ということにしたい。