文春オンライン

東京から特急で約1時間…“国道16号のほぼ終点の町”「木更津」には何がある?

2023/02/06

genre : ライフ, , 歴史, 社会

note

大通りをまっすぐ歩いて行くと…

 スパークルシティの脇、逆さまになったタヌキがぶら下がっている「きぬ太くん」のオブジェがそびえる場所からは、まっすぐ西に向かって大通りが続いている。「富士見通り」という。その名の通り、天気が良い冬の日には東京湾越しに富士山が見えることもあるのだろう。木更津から見る富士山、なかなか味わい深そうな気がする。

 富士見通りは4車線でクルマ通りも多い大通りなのだが、両脇の歩道の上には屋根があって、ちょっとした商店街のようになっている。といっても、開いている店はあまりなく、いわゆるシャッター商店街の一種といったほうがいいようだ。駅前のそごうといい、昭和の昔はおおいに賑わっていた中心市街地が、すっかり空洞化してしまったお手本のようだ。

 

 この富士見通りをまっすぐ歩いて行くと、10分も経たないうちに海が見える。何があるというわけでもないが、海沿いの小さな緑道にはタヌキがいる(もちろん置物です)。タヌキといえば信楽焼がおなじみだが、木更津もタヌキの町だ。駅の南側にある証誠寺のたぬきばやしの伝説に由来する。木更津駅の発車メロディも、童謡「証誠寺の狸囃子」である。

ADVERTISEMENT

 それはともかく、タヌキとはまったく不釣り合いな小さな港には、ボートがいくつも係留されていて、奥には真っ黒い大きな船も見える。何かの運搬船なのだろうが、盛んに航行しているようには思えない。港の遠く向こうに見える橋は中の島大橋。恋人の聖地だとかなんだとかで、これこそ『木更津キャッツアイ』で一躍有名になったスポットである。

 

恋人の聖地の上から「バリバリ」という音が…

 そんな恋人の聖地を、遠くからぼんやり眺めていたら、その真上をバリバリと音を立てながらヘリコプターが飛んでいた。一般的によく見かけるタイプのヘリではなくて、どうやら輸送ヘリの類いだ。木更津の町には、陸上自衛隊木更津駐屯地があるからその関係だろう。

 東京湾全体を見渡せる房総の港町・木更津には、1936年に海軍航空隊が設けられ、それが戦後に米軍や空自の基地となり、1968年から陸上自衛隊の駐屯地になった。木更津は、基地の町という側面も持っているのである。