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「なぜそんなセコい発想になるんやろ」「見るべきは親の所得ではなく子ども自身」泉房穂明石市長が“所得制限”に断固反対するワケ《撤廃ムーブは日本に芽生えた“希望”》

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泉房穂明石市長インタビュー#1

genre : ライフ, 社会

note

“暴言事件”後 お母さん方が「今度は私たちが守る番」

 明石市のオムツ無料宅配事業では、すべての0歳児世帯を直接訪問してオムツを手渡ししています。スタッフはみんな子育て経験のある女性。それも子育てで“苦労した”経験のある女性です。彼女たちの協力なしには成り立たない事業ですが、みなさん使命感を持って取り組んでくれている。

 そうした市民の味方を得ることができたことが一番の財産かもしれません。

――市長と市民の信頼関係の厚さを実感します。4年前の暴言事件の時も、市民から再出馬を望む声が上がりましたね。

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 言い訳じゃないですが、貧乏な漁師町育ちなものでホンマに口が悪くて。カッとなりやすい性格だし、妻にも「あんたは政治家に向いてない」とよう言われます。あの時は反省して、政治家人生ももうこれで終わりかとも思ったんですが、私の知らないところで署名活動が立ち上がったと聞いて驚きましたわ。

 当時は「誰が仕込んだんや?」なんて思ってんけど、市民の、主にお母さん方が立ち上がって活動をしてくれていたようです。

親子交流スペース「ハレハレ」。ボールプールも無料で利用できる

――子育て世代のお母さんが、自主的に。

 そうなんですわ。署名に添えられたメッセージにはすべて目を通しましたが、これがホンマに泣けるんですよ。「たとえ出馬しなくてもありがとうだけは伝えたい」とか、「これまでは私たちが守ってもらってきた。今度は私たちが守る番」とか。読みながらボロボロ涙が出ましたね。

 あの時点で市民との一種、相思相愛関係は形成されてたんかな。再出馬については家族内でも意見が割れたんだけど、この署名活動が決め手になった気がします。

――家族内でも賛成派と反対派が?

家族内選挙の結果「僅差で再出馬が決定」

 再出馬するかどうかについて家族会議を開きまして、私が「多くの市民からも声をかけていただいてるし、やり残した気持ちもあるからもう一回立候補したいです」と言うと、妻からすぐに「反対です」と言われて(笑)。2人の子どもたちは、賛成1と白票1。白票の理由は「本心では出てほしくないけれど、署名活動をしている人たちの姿を見ていたらパパが出たい気持ちもわかるから」と。結果、賛成2、反対1、白票1の僅差で再出馬を認められた(笑)。

 

――最初の市長選と同じく、僅差だったんですね。

 そうなんです。あの後の4年があったからこそ、明石から始めた子育て支援が近隣13の市町村に広がったのではと思っています。

 私は一つのことに集中すると周りが見えなくなるタイプのようで、日常生活ではいつもどこかに体をぶつけて血を流したり、何年も乗っている自家用車が覚えられずに駐車場では別の車に乗ろうとしたり……。こんな自分が家族を持って、しかも仕事を理解してもらえているのは本当に幸せなことですわ。市民にも家族にも、感謝やね。

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