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降雪、低温、強風、雪崩のリスク

 さて、バックカントリーの舞台となる、自然の状態のままの雪山には、降雪、低温、強風、雪崩など、さまざまなリスクが潜んでいる。そうしたリスクに対処するためには、知識やノウハウを学び、装備を整え、トレーニングを行ない、技術を磨く必要がある。

 たとえば雪崩は、雪山で最も警戒しなければならないリスクのひとつであり、雪崩に遭わないようにするためには、天候や雪のコンディション、地形などによってリスクの高低を判断し、リスクを軽減させる行動マネジメントをとることが要求される。それでも雪崩を100パーセント回避するのは困難であり、冒頭で挙げたような雪崩事故が起きてしまう。

©羽根田治

 ちょっと話は逸れるが、雪崩対策用の必携装備とされているのが、雪崩ビーコン、シャベル、プローブの“三種の神器”だ。ただし、これらを携行していても雪崩を避けられるわけではない。万一、雪崩に埋没してしまった際に、生存率を少しでも上げるため、そして救助者をなるべく危険に晒さないようにするためのものなのだ。三種の神器を携行しているから雪崩対策は万全だ、というのは誤った認識である。

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 雪山のリスクは雪崩だけではない。視界不良時のルートミス、クレバスへの転落、雪庇の崩落、立木への激突、転倒による窒息(積雪が深い場所で転倒して上半身が埋もれると、起き上がれずに窒息してしまうことがある)、低体温症なども大きな脅威となる。スキー場であれば、これらのリスクが管理されているので、危険な状況に陥ることはほとんどない。しかし、人の手が入っていない雪山では、おのおのが自己責任で、リスクに対処することが求められる。そしてバックカントリー愛好者の多くは、そのことをしっかり自覚し、実践しているものと信じたい。

©羽根田治

バックカントリー愛好者はなぜ批判されるのか

 そのバックカントリー愛好者が、なぜこれほどまでに批判されるのかというと、スキー場の「立入(滑走)禁止区域」とバックカントリーエリアが混同されていることが大きい。日本のスキー人口の多くを占める一般スキーヤーは、通常、スキー場でリフト券を購入してスキーを楽しんでいる。各スキー場はそこを運営する事業者によって管理され、滑走可能なゲレンデやコースが整備されている。ただし、同じスキー場内であっても、雪崩などの危険がある一部斜面は「立入(滑走)禁止区域」とされ、ロープを張るなどして、侵入できないようにしている。