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遭難事故が相次ぐ「バックカントリー」への誤解と偏見で「自業自得」の声も…救助費用の“実態”は

魅力とリスクを解説

2023/02/08

genre : ニュース, 社会

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 なお、バックカントリーが盛んなエリアでは、登山届を提出する、管理区域外へは所定のゲートから出る、などのローカルルールを定めているスキー場もある。こうしたルールを守るのは当然であり、バックカントリーに出ていく以上、それなりの知識とスキル、体力、装備が必要になることはいうまでもない。「パウダーを滑ってみたい」というような興味本位から、スキー場のゲレンデを滑るのと同じ感覚でバックカントリーに飛び出してしまうようなことは、厳に慎むべきだ。

八甲田エリアに掲出されていたローカルルール。管理区域外での滑走には「自己責任」が伴うこと、遭難・捜索救助活動費用などについて詳細に書かれている ©羽根田治

公的機関による救助はタダ、民間救助隊員の場合は…

 最後に、バックカントリーでの事故の救助費用について。基本的には雪山登山における遭難事故と同じ扱いになり、警察や消防などの公的機関による救助費用はタダである。

 ただし、民間の救助隊員に出動を要請するケースも多く、その場合、隊員ひとりあたり1日3万~5万円ほどの日当が発生する。行方不明者や雪崩埋没者など、捜索が長期化すれば費用もかさみ、ケースによっては必要経費などを含め数百万円にのぼることもある。また、事故現場に近いスキー場が救助活動に協力する場合、スノーモービルや圧雪車の出動料金、リフトの時間外運行費用なども加算されてくる。

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猫魔スキー場管理区域外等での救助費用について書かれた看板 ©羽根田治

 救助費用についての考え方は人それぞれだが、スキーや登山が自己責任で行なわれる以上、当事者負担が原則ではないかと私は思う。そうした事故に備えるために、山岳保険というものがある。

 しかし、「自己責任だから」とはいえ、「助ける必要はない」という考え方には賛同できない。山で命の危険にさらされている人には、なにはさておき、手を差し伸べようとするのが人道というものだろう。警察や消防などの山岳救助隊員は、山で窮地に陥っている人を助けるために存在する。「基本は自己責任だけど、万が一のときには助け合う」という共通認識は、失わないようにしたい。

 

遭難事故が相次ぐ「バックカントリー」への誤解と偏見で「自業自得」の声も…救助費用の“実態”は

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