100人から「マズい」と言われたお店が今や大人気店に。そのワケは…
最後は「お肉を愛するラーメン屋。」というキャッチフレーズで親しまれている「ラーメン悟空」。こちらも独創的なメニューが人気で、40席ほどの店内は開店と同時に満席になる。
最初から順調だったわけではない。社長の林原尋生(ひろお)さん(42)が試行錯誤の末にたどり着いたのが今の形だ。
林原さんが店を出したのは25歳の時だった。家族経営のレストランを手伝っていたが、父親はそれまでも開いていたそば屋に専念することになり、林原さんには「ラーメン屋をしたらどうか」と背中を押した。
林原さんは簡単に考えていた。国道9号線沿いに、中古車販売店が使っていた空き事務所を見つけ、駐車場もあったことから、「ここならいける」と店舗に改造した。
「1日に100人ぐらい来ました。でも、口をそろえて『マズイ』と言われました」と振り返る。
本を読んだり、何が流行しているかを調べたりした。米子地区のほとんどのラーメン店には繰り返し通って研究した。「でも、一度マズイと言われた店に、なかなか人は来ません」。開店から2年ほどは、1日の来客が18人、売り上げは9000円ということもあった。
それでも、次第に上達して、少しずつ客が増えた。近所で親しくした人が「腕を上げたかな」と訪れてくれもした。
なんとか経営が軌道に乗ってきたのは開店から5年ほどしてからだ。
辿り着いた「牛骨100%のスープ」これが塩ラーメンに合った
それまでは父親に教わった牛・豚・鶏の3種でだしを取る定番のスープだったが、牛骨100%のスープも開発した。塩ラーメンを出そうと試した結果、一番合ったのだ。これが悟空独特の牛骨ラーメンに発展していく。
牛骨だけだと脂っこい印象があるが、悟空のスープは牛骨だけでもあっさりしていて、透き通るような透明感がある。
だが、林原さんには気がかりなことがあった。出来立てのスープは美味しいのに、夕方になると色が濃くなってしまうのだ。これは後に分かることだが、牛の脂が酸化するせいだった。脂は味の強みであると同時に弱みでもあった。そもそも牛骨を鍋いっぱいに入れて煮出すので、だしが濃い。酸化が進みやすい条件があった。
林原さんは工夫を凝らす。釜はガスではなく、蒸気式にして、長時間煮込んでも安全が確保できるようにした。ボコボコと沸騰させて空気にさらすのではなく、その手前の温度を維持して酸化も抑制する。そして12時間以上も煮込んで、エキスをしっかり抽出し、旨味を際立たせた。