元航空自衛官が「年間500食」食べまくって辿り着いた人気の一杯

  鳥取県米子市で結成された「米子牛骨ラーメン同盟」。仕掛け人の米子市観光課、大森満晴・観光振興プロデューサー(59)オススメの店を歩く。

 次は今年の4月23日で開店7周年を迎える「がんこラーメン華漸(かぜん)」だ。営業時間が午前6時から午後1時までという朝ラーメンの店である。

午前6時開店の朝ラーメン。店の外はまだ暗い(がんこラーメン華漸)

 店主の吉田維宏(ただひろ)さん(43)は元航空自衛官で、ラーメン好きが高じて店を開いた。

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 はまったのは中学生の時だ。東京でおじが開いていた店の味に感動した。おじは東京では珍しい牛骨スープの「一条流がんこラーメン」の弟子で、やはりラーメンが好きで、靴屋から転身した人だった。

 ラーメンに目覚めてからの吉田さんは店を食べ歩くようになった。「今までに何千軒も回ったと思います。休みの日も食べるので、年間500食にはなります」と話す。学生時代はいくつかの店でアルバイトもした。

 大学卒業後に入隊。米子空港と滑走路を共用する美保基地(米子市)で10年間勤務し、実家がある埼玉県の入間基地へ転属になった。しかし、「ラーメン店を開きたい」という思いを断ち切れずに退職。おじの店を手伝うなどして修業し、牛骨ラーメンの激戦区・米子に戻って1人で店を開いた。美保基地の勤務で米子が好きになっていたのと、鮮度と品質のいい具材が手に入るからでもあった。

「どうせやるなら華やかなラーメンを提供したい。そしてゆっくりでもいいから前進していきたい」と店名を「華漸」としたが、当初は1日に10~20人しか客が来なかった。というのも、隣がラーメン店で、新規参入した吉田さんは遠慮して宣伝しなかったのである。

アルバイトと2人で営業する吉田維宏さん(右、がんこラーメン華漸)

大逆転のヒミツ、それは朝6時から「朝ラーメン」をはじめたことだった!

 耐えかねて隣の店主に断り、自分でチラシを作って配り歩いた。営業時間も当初は日中だったのを朝7時からにし、さらに1時間早めた。「朝なんか無理だと言われたのですが、全国のラーメンのまちには朝から開いている店があります。米子でも食べたい人がいるのではないかと思いました」。

 戦略は当たった。午前6時の開店と同時に行列ができた。

 早朝から働いている人、夜勤明けの人、出勤前の人、米子空港から出掛ける前にという人。取材に訪れた時に出会ったのは、鮮魚店で働く男性(36)だ。「来るのは週に2度ぐらい。早朝、市場へ仕入れに通っているのですが、市場の様子を見た後、車で30分ほど運転して食べに来ます。それからまた市場に戻ります」と話していた。往復に1時間も費して通うのは「病み付きになってしまった」せいだ。