2020年10月5日、東京工業高等専門学校(東京高専)の学生会長・野村陽向(ひなた)さんが自殺した。当時18歳だった。

 遺族が遺されたスマホなどを調べたところ、学校側とのトラブルの痕跡が認められた。

試験前、急遽、会計監査。学生会長が対象に

 同じ頃、不明朗な会計も問題になっていた。

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 監査をすることになったのは、学生会による物品購入に伴うポイント、用途不明の物品の有無について。学校側は「昨年度の領収書のポイント部分が墨消しされているものがあり、ポイントが高額であれば使用ルールが必要と判断した」としている。この監査のため、野村さんが亡くなる前の10月2日から学校側は学生会の会計監査に関する指導を行った、としている。

「学生に聞いたのですが、監査をするように言ったのは、アカハラとも取れる発言をした講師です。そもそも監査は今回が初めてだったようです。なおかつ、なぜ学校側は監査を早く終わらせたかったのでしょうか。監査をするなというわけではないのですが、試験前に監査をする必要があったのでしょうか」(野村さんの父親)

 10月2日22時過ぎから、監査員から野村さんに対して、Teamsでのリモート監査が始まった。監査は23時まで続き、途中、28分間の通話もあった。

誕生日を迎えた陽向さん(遺族提供)

「夜中に監査のやりとりをしているのは異常だと思いました」

 10月4日午後2時半ごろ、M講師から体裁についての助言を受けた監査委員の学生の一人は、野村さん立ち会いのもとで、領収書の件について精査して報告したいと、教員にメールをした。しかし、その教員は内容を確認したものの、外出中とのことで返事ができなかったという。

 同日午後9時半ごろ、監査委員の学生はTeamsで、野村さんに対して、「明日、監査をする」旨のメッセージを送った。ただ、その際、必要書類の提出期限を「3日23時59分」とミスして送っているのに気がつき、「5日23時59分」と訂正して、野村さんに送信している。翌5日0時半ごろ、同様のメッセージを再送信した。

「息子の死後、スマホなどを調べると分かったのですが、夜、Teamsのチャット機能を使って監査をされていました。チャット内容も読めたのですが、夜中に監査のやりとりをしているのは異常だと思いました。そのことを学校に伝えました。学校は指示をしておきながら、監査委員に監査を丸投げしていました。この監査では、息子だけではなく、学生会の役員も追い詰められていたことがわかっています」(父親)