人選は関わることができたが、第三者委員会の設置についてはどう思っているのか。
「第三者委員会の設置自体に文句があるわけではないのです。しかし、委員の人選はしっかりしてほしい。委員の一人が、前任の学校長、新任の学校長と面識があり、中立公平の観点から辞任しています。(何をどこまで調査するかなどを定める)設置要綱はあるのですが、その内容は、私たち遺族の同意をとっていません。委員の人選や設置要綱の策定に遺族は関わりたいのです」(同前)
調査内容・範囲について、要綱をつくる段階では十分なヒアリングはない。議事録作成についての明示はない。さらに、第三者委員会が入手、作成した資料の定めはあるが、遺族が閲覧できるかどうかの定めはない。
「いじめの定義では加害の前提は学生だけ。教師も含めて」
14年3月に、高専機構は「いじめ防止等対策ポリシー」を策定した。その後、16年5月、大島商船高専(山口県)で1年生の男子学生(15)が自殺し、クラスメートからのいじめが原因とする調査報告書を受け、同ポリシーを改訂した。
「今の定義では、いじめは生徒間だけですが、教師がいじめをすることも含めてほしい」(同前)
遺族としては、講師のアカハラ発言や監査が、野村さんへの“いじめ(加害行為)”か否かは気になるところだ。仮に、“いじめ行為”であれば、「不適切な指導」として問題になりかねない。しかし、同ポリシーは、いじめ防止対策推進法に準じ、いじめの定義には、教師からのいじめは対象外。
「なぜ、この時期に監査をしなければならなかったのでしょうか。9月25日に監査をすると決めてから亡くなるまで10日しか経っていません。しかも、学生会の監査は今回が初めてだったといいます。アカハラ被害申請の逆恨みだったのでしょうか? この時期の監査は意図的にしているとしか思えないです」(同前)
一連の経緯について筆者が東京高専に確認したところ、「調査中のため、答えられない」との回答だった。
高専生の自殺は、21年3月16日の参議院文教科学委員会でも取り上げられた。佐々木さやか議員(公明党)が質問した。その質疑によると、20年度の高専生の自殺者は13人。自殺率では高校生の約2倍という数値が明らかになった。