「国内2000店」の夢
関係者への取材を繰り返して見えてきたのは、次のような経緯だった。東京・目黒に開業した1号店が斬新だったのは、コロナ禍で生まれた「非接触」のニーズに応えただけでなく、「大手チェーン店並みの価格で、よりおいしい」という市場に切り込んだことだった。一般的な外食店で30%程度とされる原価(食材)率を50%程度まで引き上げて、コストパフォーマンス(費用対効果)を重視する消費者を満足させようとした。
テークアウトに特化したのはそのためだ。客席スペースを不要にして店舗面積を小さくし、家賃を低く抑えた。さらに、注文の受け付けと支払いをスマホアプリまたは店内のセルフレジに限定して現金の取り扱いをやめた。注文を聞いたり商品を運んだりするホールスタッフが不要になり、人件費を安くできる。こうして削減した費用を食材費に回し、利益率を犠牲にすることなく消費者にとってお得なメニューにした。
参考にしたのは「イン・アンド・アウト・バーガー」。米国カリフォルニア州を中心に展開しているハンバーガーチェーンだ。メニューの数を絞り込み、家賃が安い郊外に出店してコストを抑える一方、生肉から焼くパティと新鮮な野菜を使っているのが特徴だ。
マクドナルドなどの大手ハンバーガーチェーンと価格はあまり変わらないものの、価格の割に質が高いとして人気を博している。
「早くて安い」を実現した外食店の代表格であるマクドナルドに対しても、やりようによっては勝負を挑めることをイン・アンド・アウト・バーガーは証明した。その成功例を日本に移植するにはどうしたらいいか。アイデアを練っているうちに、デジタル技術を活用したテークアウト専門店の形に行き着いた。
ブルースターを立ち上げたのは1人焼肉店「焼肉ライク」を手掛けるダイニングイノベーション(東京・渋谷)の子会社だ。その焼肉ライクの成功もブルースターの戦略に強い説得力を与えた。
1人1台の無煙ロースターを置く焼肉ライクは、従来の焼肉店が家族や友人、カップルをメインターゲットに据えるのに対して「おひとりさま」需要を狙った業態だ。2018年の開業から、2022年10月時点で都市部を中心に全国90店超を構えるまで順調に拡大している。