電話で「うちで女性は採用していません」
――52社。それはすごいです。
門馬 その中で面接すると言った会社が2社だけ。電話で「うちで女性は採用していません」ってはっきり断られちゃうんですよ。それだけ昔は女性の雇用率が低かったんです。
――よく途中で心が折れませんでしたね。
門馬 しかも私、最初から大型に乗りたかったんですよ。だけど面接した2社のうち1社は「女性は4トンから」って。そうなると、もう選択肢は1社だけ。仕事の内容ではなく、大型に最初から乗せてくれると約束した伊勢崎の会社に24歳で就職しました。
――その時、女性社員の方は?
門馬 社員は全部で15人くらいいたんですけど、女性は私だけ。他の会社では年配の女性ドライバーはいらっしゃったようですが、当時若い女性はまず見なかったですね。今は20代、30代の女性が全然普通に働いていますけど。
――はじめての大型トラックでの配送はどうでしたか?
門馬 最初は、マンツーマンで教えてもらいながらです。大型ってどうしても大きく「ケツを振る」んですよ。
就職した会社で10トントラックに
――ケツを振るとは。
門馬 たとえば十字路を曲がる時に、自分のほうに乗用車やトラックがはみ出してきて「危ないな、この人」って思うことないですか? あれ、タイミングが悪いと他の車にぶつけちゃうんです。
今はバックモニターが付いていて、それを見ていれば後ろから来る車が分かるから、「あ、今、曲がれる」っていうタイミングも分かりやすいんですけど、昔はずっとミラーを見ながら目視なんです。それが難しくてずいぶん先輩には直されましたね。就職した会社では10トントラックに乗せてもらいました。
――そうなると、今までとは技術的にも違いますよね。
門馬 難しくなりますね。でも大型に乗れるのが嬉しくて。まず朝、暗いうちに家を出て、4時に積み込みするドライバー仲間とみんなで朝ご飯を食べてから積み込みをして、6時には出発するんですよ。私は新潟の定期便をやっていたんですけど。
――新潟に日帰りですか?
門馬 そうそう。昔は直接、ある総合スーパーの各店舗に品物を持っていったんです。4~5台で一斉に新潟に出発して新潟近くまで来たらバイバイ。帰りも時間が合えば集合して一緒に帰るんです。行きは高速なんだけど、帰りは空車なので軽いですから、三国峠を越えて景色を楽しみながらワイワイ帰ってくるという……。
大型トラックを停められるトイレ探しが大変
――本当に皆さん運転が好きなんですね。女性おひとりで大変なことはありましたか?
門馬 女性だからというのは気にしなかったです。あえて大変だったと言うなら、仕事よりもトイレです(笑)。
――トイレ? ああ、まだ道の駅とかあまりなかった頃ですよね。
門馬 そうそう。男性ならいざとなれば、どこでもできる(笑)。でも、女性だとそういうわけにもいかない。まあ、郊外ならドライブインもありますが、都会に近づくほどトイレには困りました。コンビニもあるけど、大型って停まれるところも本当に少ない。もう当時はメイクもしませんでした。だって、汗をかくと直すところもなかったですし。