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「『あいつらできてる』と噂に」「長距離運転は“男女共用”シャワーで」…49歳社長が語る、女性トラックドライバーの波乱万丈

門馬千草社長インタビュー #1

2023/04/10
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――噂話のタネにされてしまう。

門馬 そうそう。そういう話しかない(笑)。当時はもう勘弁してください、って感じでしたね。ただ、仕事では女扱いしないで男の人と同じ仕事をさせてくれたのは、ありがたかった。長距離もあちこち行かせてくれたし、最初からバラ積みもやらせてくれた。ドライバーとしての私を一番、育ててくれた会社です。

「じゃあ哥麿会のレディースに入りな」

――しっかりした会社だったんですね。ところで、門馬さんはトラックを飾るデコトラ愛好家の全国組織「哥麿(うたまろ)会」でもレディース部門の会長として奮闘されたと聞きましたが……。

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門馬 電飾のトラックを見て「かっこいいな、きれいだな」って。18歳で「哥麿会」という組織があるのを知って、19歳の時に、哥麿会会長の田島(順市)さんを知っている人に紹介してもらったんです。そしたら田島さんから「じゃあ哥麿会のレディースに入りな」と言われて。

――女性だけですよね?

門馬 そうです。当時のレディースは30人ぐらいだったかな。先輩にダンプ乗りがいたんですが、(ダンプの)背中にマーシーを描いていた人とかいましたね。

門馬さんみずから「CHIGUSA JAPAN」のトラックを運転する姿

――マーシー? 田代まさしさんですか?

門馬 ええ、当時は田代まさしも若くて人気があった頃だったので。

――門馬さんも何か描いたりしていたんですか?

門馬 会社のトラックなので他の会員さんのデコトラのように派手にはできません。仕事ができる程度にちょこっと飾らせてもらいましたけど。自分のトラックをデコらせるより、かっこいいデコトラ乗りの人たちと一緒に活動したいと思って。そこからですね、今でも毎年お正月、ゴールデンウィーク、お盆、連休は哥麿会の活動です。

女性ドライバーならではの悩み

――どんな活動をしているのでしょうか。

門馬 哥麿会の活動は交通事故の遺児や被災地などの支援をするチャリティーイベントが中心です。ペーペーの頃は、会場の入り口で誘導棒を持ってお客さんを誘導したり、募金箱を持って立っていたりとか。レディースでテントも出していたのでフランクフルトと……もつ煮だったかなあ? とにかく何か毎回、煮込んでましたね。

 

――当時は同業種の女性と知り合うことは少ないと思うのですが、哥麿会でどんな話をしていましたか?

門馬 やっぱりあの頃は女性ドライバーで集まると、多数派である男性ドライバーの愚痴を話し合っていたように思います。「あの人だけちっとも手伝わない」とか、「すぐ人の悪口を言いふらすよね~」とか(笑)。

 ただ、先ほどお話ししたトイレやシャワー問題のほかに、女性ドライバーならではの悩みはよく聞きました。レディース部門は結婚して家庭が忙しくなって出られない人も増えて本体の哥麿会の各支部に吸収される形になりました。でも最近になって、私、女性ドライバーが持つ悩みを共有して一緒に考えようと会を立ち上げたんです。

撮影=山元茂樹/文藝春秋

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