よく「なんで運送なの?」と驚かれるという、運送会社「CHIGUSA JAPAN」の女性社長、門馬千草さん(49)。長距離ドライバーを経て運送会社を起業し、長年トラガール界を牽引してきた門馬さんのもとには、悩みを抱えた女性ドライバーが集まってくる。後に続くトラガールのため、国交省に乗り込んで訴えた女性ならではの課題や、今後の環境づくりについて聞いた。(全2回の2回目/前編から続く)
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18歳で「いつか自分で会社をやろう」
――18歳からトラックに乗り始めて20代では長距離の仕事も経験した後、なぜご自身の会社を立ち上げようと思ったんですか?
門馬千草さん(以下、門馬) 実は18歳でトラックに乗ってすぐに、20歳前の私と60歳の方のお給料が同じだと気が付いて。それはつまりトラックは体力勝負、年齢を重ねて体力がなくなってきたら、お給料も下がるんだなと。それならいつか自分で会社をやろうと思って。
前橋の会社で長距離ドライバーとして成長させていただいたのですが、その後、「配車係をやってみないか?」と声をかけてもらった埼玉の会社へ縁あって転職しました。実際に自分で会社をやるきっかけになったのが、この埼玉の会社です。
――配車係というのは、社員の誰さんが明日、何時に何トンのトラックでどこに行って……といったコーディネートをする仕事なのでしょうか。
門馬 そうです。そうした仕事の割り振りを決める役なのですが、私、一番下っ端なのに、先輩方に指示を出さないとならない。時にはクレームもあるのですが、ペーペーの分際で、先輩に注意なんてしづらいですよね。でも、うるさい社長で、「なんであいつのことを怒れねえんだ!」って(笑)。
――配車係の仕事も苦労が多いんですね。
門馬 ただ、だんだん慣れてくると、会社の配車係だけじゃ物足りなくなってしまって。それで今まで会社がやってこなかった利用運送も勝手に勉強して始めたんです。
「はじめまして。明日、走れませんか?」
――利用運送?
門馬 業界では「水屋」っていう言い方をするんですけど、仲介みたいなものです。とはいえ怪しい仕事ではなく、ちゃんと利用運送には許可があって。自分のトラックを持たないけどお客さんから仕事をもらって、他の会社のトラックに引き受けてくれないかお願いするんです。
――配車係の合間にやっていたと。
門馬 そうなんです。最初は知り合いの運送屋さんから仕事の話を振ってもらう程度だったんですけど、そのうちインターネットの検索サイトで「平ボディ 大阪 長距離」という感じでググって、ネットに出てきた会社に「はじめまして。明日、走れませんか?」って飛び込みの電話をしまくったんです。全然、それが苦じゃなくて、あちこち探してやっと頼めた時は、もう楽しくて。
――トラックに乗れなくても、楽しみを見つけたんですね。その仕事は副業になるんですか?
門馬 いいえ、業務時間ですから会社の売り上げになります。気付いたら、ある日、社長がお客さんに「こいつだけで1本ですよ」と私を見て言っていたんです。「月1本」って何のことだろうと思ったら、利用運送の売り上げが、月1000万になっていたんです。