親の所得制限で子どもが手当をもらえないのはまずい
先日も、子育て世帯に対する賛否に世代間のギャップがあることが産経新聞とFNNの調査で明らかになっています。特に児童手当の所得制限撤廃に対しては賛成が60代は35.1%、70歳以上では25.7%しかおらんという現実があります。なんで高齢者は子育て世帯に厳しいのかよく分かりませんが、この所得制限撤廃についてはあくまで支援される対象は子どもであって、理屈としては、子どもは扶養される側とはいえ親世帯にいくら所得があってもそれとこれとは別の議論になります。
子育てが始まって産休・育休期間に入ると、共働きだと特に世帯収入に大きな減少が見られることもあるため、「親と子どもは別人格であり、子どもにも等しく人権がある」ことを考えれば親の所得制限で子どもが手当をもらえないというのはまずかろうと思うわけですね。だからこそ、若い世帯ほど育児で起きる所得の減少を考えれば子どもへの手当は必要だという議論になるわけです。
他方、これらの子育て支援策に学術的なエビデンスはあるのか、という正面からの疑問を呈する会計検査院・吉田浩さんの強烈なレポートもあるので、ご関心のある方はぜひ一読賜りたいとも思います。
少子化と子育て・就業支援事業の効果の検証
https://www.jbaudit.go.jp/koryu/study/mag/pdf/j19d01.pdf
高齢者の一番の関心事は、自分の健康や支給される年金
これらの政策予算の効果検証と社会的・政治的な政策要請は常にギャップがあるものです。学術的に正しくても政策に落とし込むのが諸般の事情で難しかったり、逆に政策的にやりたいことだけどどう捻り出しても効果があるというエビデンスがない事案もあります。
このような問題の典型が少子化対策や子育て支援なのであって、もう子育てが終わった高齢者からすれば、一番の関心事は自分の健康や支給される年金です。自分たちの子どもの世代が経済的に厳しく結婚できなかったり子育てのための費用捻出に苦労していたとしても、「自分は逃げ切れる」と考えれば産経・FNN調査のように子育て支援なんて必要ないと冷淡な態度をとる高齢者も増えることでしょう。
そのような問題に直面している日本社会において、成田さんがある種の議論喚起を目指して暴言を吐いたことは、その暴言自体に咎が及ぶのは仕方がないとしても、本人の身分が剥がされたり、イベントやメディア出演がキャンセルされるほどのものなのか、という議論はされてしかるべきです。