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 同じことは、滅びゆく地方自治体がヤバいので破綻させ再再編しましょうかとか、衰退産業で勤労者が集まらず黒字倒産する企業のために東南アジアから移民を入れましょうとか、ある種の菅義偉政権に代表されるような「いま目の前に起きている問題に対処するために、場当たり的な弥縫策的な政策を実施した」結果、うっかり菅さんや和泉洋人さん周辺が仕事できちゃうもんだから、どんどん話が進んで新自由主義ばんざいみたいな政治になりかけたりもしました。

 そういう問題が表面に出るたび、発言の品格は別として、単なる老害批判ではない、日本社会がより良くなる政策を実現するために高齢者をどう扱うのかという議論はちゃんとやっておいたほうがいいですよ。

ちゃんと議論し直す覚悟がある人がどんどん出てくれば

 蛇足ながら、成田さんを擁護する記事を何本か書いた反響や反論、批判の中に、ふたつ問題があって、幻冬舎・箕輪厚介さんや西村博之(ひろゆき)さんと関係が深いので駄目だという話と、雑誌『世界思想』への寄稿文や成田さんが上梓された書籍に危険思想が入っていてメタファーの論述を持って擁護するのはおかしいという話とがありました。

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 前者は単純に箕輪さんが言論人のデスノートというか、駄目になっていく人の瞬間の輝きを幻冬舎からの出版という草刈り鎌で刈り取って暮らしている人なので、彼に近づかれて本を出した人はみんなまあまあ一瞬光って消えていくという点で凄い才能の持ち主であると思っています。どうにかなっているのは堀江貴文さんぐらいでしょうか。

 西村博之さんも同じ箱ですが、基本的に彼はその場その場の切れ味で適当にいいことを言ったり批判したりするだけですので、無視しておけばそれほど問題にはならないのですが、学識のない西村さんとセット売りされてしまって同じ箱に入れられてしまった成田さんは世間知らずだという以上の何かはないのだと思います。

 また、危険思想については成田さんの記事を読む限り、計量的なことに知見はあっても社会的な事柄や制度に関する問題については突き詰めて考えたことがない人物だと思いますし、実際先の記事でも書きましたが成田さんの書いている教育制度に関する理解は周囲から言われたことを検証することなく鵜呑みにしている内容であるため、深く何か危険な思想にかぶれていてその実現のために学術的な見解や立場を使おうとしているようには見受けられません。

 ただし、計量経済学やその方面での実績を見る限り、うっかり優秀であるがゆえに、ここで燃えてむしろ良かったのではないか、とすら思います。

 というのも、ここで本格的に知識人として持て囃され、政府審議会などでホープとして迎えられて彼の言っていることも斟酌して政策に反映させましょうという話でも出ようものなら、起用した政治家や省庁・官邸ごと大爆発をしてしまった可能性さえあります。成田さんのためにも、このタイミングで燃えて良かったのです。どうせイエール大学なんてテニュアをほとんど出しませんし、彼ほどの業績や才能を持っている人であれば、一度睡眠障害を何とかしてから国内でもどこでも再出発できると思いますので。

 そんなわけで、1カ月を超えてなおもカロリー高く黒煙を上げている成田さんが言わんとしていることも踏まえて、ちゃんと議論し直す覚悟がある人がどんどん出てくるといいなと思いました。