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執刀は研修医、ドナーは生きた女性…日本人男性患者(53)が目撃した“海外臓器移植ツーリズム”の恐怖「意識は戻りましたか?」「ついさっき死んだ」

執刀は研修医、ドナーは生きた女性…日本人男性患者(53)が目撃した“海外臓器移植ツーリズム”の恐怖「意識は戻りましたか?」「ついさっき死んだ」

臓器移植斡旋逮捕 #3

note

 日本で初めて、臓器移植の斡旋の疑いで逮捕者が出ることになった、NPO法人「難民患者支援の会」をめぐる事件が医療業界を震撼させている。逮捕されたのは、「難病患者支援の会」理事の菊池仁達容疑者(62)。肝臓移植を希望する日本人男性をベラルーシへ渡航させ、無許可で移植手術を受けさせた疑いが持たれている。

 都内にクリニックを持つ医師の紹介で腎臓の移植手術を受けるために小沢克年さん(53)がキルギスにたどり着いた時、そこで待っていたのも菊池容疑者だった――。(全4回の3回目/#1#2#4を読む)

腎臓の移植手術を受けるためにキルギスへ渡航した小沢克年さん

 小沢さんは2021年11月12日、医師に指定された口座に腎臓移植の手術費用2170万円をに振り込み、12月1日に日本を出国した。

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 まず中央アジアのウズベキスタンに飛び、そこから移動してキルギスの国立病院で手術を受けるのだという。小沢さんの手術の手続きをした医師は、執刀外科医について「臓器移植の最高のドクターの1人です」と渡航前に説明している。また、小沢さんが受け取った資料にも、現地の医療体制を称賛する記載がある。

「担当は『カタールの軍医』と名乗るエジプト人医師でした」

《経験豊富なインド人外科医(英国にて医学博士号取得)とトルコ人外科医(英国にて医学博士号取得)を中心にした移植チーム》

《私が信頼しているDr.Aに紹介状を出します。Dr.Aが現地移植チームと詳細を打合せします》

 小沢さんはこうした記述を信じて渡航を決断したが、そんな“最高の移植チーム”は幻だったことが、現地に入りすぐに発覚する。小沢さんは憤りながら話す。

「執刀を担当するA医師本人が空港にピックアップにくると聞いていましたが、『OZAWA』と書いたプラカードを持っていたのが、見るからに少年の顔をしたヤツなんです。聞いてみると、現地医大に通う大学生でした。病院についても資料にあったインド人やトルコ人の医師はおらず、担当は『カタールの軍医』と名乗るエジプト人医師でした。ウズベキスタンでは検査などをすると言われたのですが、渡航前に言われていた国立病院ではなく、産婦人科メインの民間病院でした。しかも医療器具を運び込む時もエレベーターに蹴って無理に押し込むなど、滅茶苦茶でした」

小沢さんが滞在していたキルギスの病院。衛生状態には不安が残ったという

 手術の日程も、どんどん後ろに延びていく。

「手術日は当初12月10日と聞いていましたが、まず24日と後ろにずれこみました。エジプト人医師はクリスマスホリデーで帰国すると言っていましたし、術後のケアをちゃんとしてもらえるのか不安でした。結局、『安心だ』という医師の説明とは何もかも違っていたんです」

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