肝臓移植を希望する日本人男性に、無許可でベラルーシで移植手術を受けさせたとして逮捕されたNPO法人「難病患者支援の会」理事の菊池仁達容疑者(62)。臓器移植の斡旋の疑いで逮捕者が出たのは、日本で初めてのことだ。(全4回の2回目/#1#3#4を読む)

「難民患者支援の会」の菊池仁達容疑者

 菊池容疑者が行っていたのは、重病に苦しむ患者を狙い大金を巻き上げたあげく、複数の患者を死亡させた、最悪の“臓器移植ビジネス”。その菊池容疑者の斡旋を受け、2021年に腎臓の移植手術を受けるためにキルギスへ渡航したが、現地で臓器移植の過酷な実態を目撃して手術を断念した男性がいる。

 神奈川県藤沢市在住の小沢克年さん(53)は高校から大学、卒業後も社会人チームでラグビー選手として活躍し、世代別日本代表に選ばれた経験を持つ。しかし2018年から病魔に冒され、今は週3日、1回5時間の人工透析治療を受ける生活を送っている。

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腎臓移植の手術を受けるためにキルギスへ渡った小沢克年さん

 小沢さんは海外で腎臓の臓器移植を受ける方法を模索する中で、菊池容疑者と知り合ったという。小沢さんがキルギスで目撃した、患者が次々と倒れていく地獄の“移植ツーリズム”とは――。

「頑張れば5年ぐらい生きられるよ」

 小沢さんが急性腎不全と診断されたのは2018年11月、49歳の時だった。当時は大学生の息子や高校生の娘を抱え、まさに働き盛り。それから4年の月日が経ち、現在の小沢さんはガッシリとした体格は維持されているものの、時折ふらつきながら歩く姿は心もとない。

「週に3回透析を受けていますが、2日間空くと身体がむくみ耐えられないほど気分が悪くなります。足の裏がパンパンに腫れて丸くなり、バランスボールの上を歩いている気分になります。昨年10月に最後にラグビーの試合を見た時は、観客席の階段を立って上がれなくなってしまい、四つん這いになって、周りの方に『大丈夫ですか?』と心配されちゃいましてね……。最近は目も見えなくなってきて、車の運転もできません。2019年頃に診察で『頑張れば5年ぐらい生きられるよ』と看護師さんに言われ、『俺の余命5年なのかよ』と落ち込みました」