2階から舞台を眺めると、1階からの景色とはまた違う特別感を味わえる。シャンデリアがぶら下がっていたという天井も間近に見える。どんな人がどんな気持ちでこの席に座っていたのだろうか。座ってみると、少しだけ当時の人の気持ちに近づいた気がした。
2階の奥にある映写室にも入ることができる。
映写室では、1950年代製造の映写機が現存。映写時は非常に熱を発生させるため、昔、フィルムが発火してしまう事故があったそうだ。火災防止のため、床がトタン張りになっていたり、火伏せの神様が神棚に祀ってあるところも見逃せない。
夢中になって撮影をしていると、ロビーの方で話し声が聞こえてきた。次の上映時間が迫っているのだ。慌てつつ、且つ見落としはないか慎重に辺りを見渡しロビーへと戻る。スタッフの方にお礼を言い、後ろ髪を引かれる思いで高田世界館をあとにした。あっという間の15分間だったが、非常に充実した時間であった。
歴史ある建物、街並みを残していく難しさ
2007年、中越沖地震が起こると、高田世界館は雨漏りがはじまってしまった。修繕するにもお金がかかるため、個人オーナーによる運営では維持することが難しく、閉館の危機に迫られていた。そんな中、市民や映画ファンによる保存活動が始まり、2009年にはNPO法人が発足。個人オーナーから譲渡を受け、新たな体制による運営が始まると、再生保存・活動が進み、多くの人々の努力のおかげで今のかたちになったそうだ。聞けばここだけでなく、町家や雁木の高田らしい街並みを残そうと、各所で保存活動が進められている。
一方で、冒頭で紹介した雁木通りも、近年は車社会となり歩行者が減ったこと、また雁木を作る金銭的負担から、新たに家を建てる際には雁木を作らない家が増えており、雁木造が続く街並みは減りつつあるようだ。実際に、高田のメインストリート、本町商店街は雁木ではなく、現代的なアーケードが連なっている。ここもかつては雁木の並ぶ通りだったそうだが、近代化、都市化の流行に流れてしまい、どこかの街でも見たことがあるような、既視感のある街並みになってしまった。
新潟県内を走っていると、高田だけでなくあちらこちらで雁木通りを見ることができる。風情ある佇まいをぜひ、雁木の下から味わってみてほしい。ここにしかない街並みが、どこかと似た姿になる前に。
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