特殊詐欺グループの主犯として有罪判決を受け、刑期を終えたフナイムさん(42)は、多くのメディアに出演して、特殊詐欺や“闇バイト”などの実態について話している。連続強盗事件など闇バイトの関心が集まる中、犯罪の加害者を増やさない、非行少年を出さないための再犯防止活動を繰り広げている。

 犯罪の手口を知ることは、防犯意識の高まりの一助になるだろう。しかし、筆者はフナイムさんがそもそも詐欺に手を染めた経緯や心情を知りたかった。取材を申し込むと、本人の話を聞くことができた。

「稼げる仕事がある」と声をかけられ

 ニックネーム「フナイム」の由来は、受刑者の収容施設「島根あさひ社会復帰促進センター」での受刑者番号「2716」から。2015年に犯した被害額6000万円の特殊詐欺で逮捕され、16年に懲役5年4ヶ月の実刑判決を受けた。その後21年11月、刑期が満了となっている。

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フナイムの由来の受刑者番号

 フナイムさんが詐欺を始めたのは、23歳のころ。当時サパークラブで働いていた。その店の男性客から「稼げる仕事がある」と声をかけられた。

「当時、役者を目指していたんです。店で華やかな人たちを見ていたこともあり、派手な暮らしにも憧れていました。そのため、“やってみましょう”と思ったんです。詐欺とは知らずにマンションへ行きました。マニュアルもありましたし、2ヶ月間の研修もありました。研修の間は月20万円の報酬でした。

 次第に詐欺だと分かったのですが、最初の段階で身分証のコピーを取られていますので、下手に逃げられない。反社の名前も出されていました。紹介してくれた人の顔を潰せないというのもあります。だから、やめようとは思わないし、やめられなかったんです」

インタビューに応じるフナイムさん

いったん詐欺を辞めたものの…

 研修期間が終わって別のメンバーと一緒に仕事をするようになった。しかし、他のメンバーは月100万円以上の報酬があったが、自分だけは報酬30万円。上だけがよい生活をしていた。その後、26歳ごろに詐欺をいったんやめたという。

「やめたのは、馬鹿らしかったから。毎日、『捕まるんじゃないか』と考えていました。警察の手がすぐそこまで迫ってきたと感じていました。だからこそ、気が休まらない。そのため、詐欺を抜けて、もう一度、夢だった役者を目指そうと思ったんです」

 役者を目指し、芸人もしていた。その後、知り合った女性と同棲した。その2年半後、その女性から「結婚したい。結婚しないなら別れる」と言われた。結婚しようと決意したが、いまのままでは経済的には安定しないと思っていた。

「お金を稼がないといけない。ただ、僕は学歴もない。どうしよう」

 そんなときに詐欺グループを設立した。

「遊び感覚でした。毎日同じことの繰り返しです。実際に詐欺で奪ったのは何件か覚えていません。例えば、テレアポの仕事をしていたとして、何件電話をかけたか覚えていますか? きっと忘れると思いますが、それと同じです」