シナリオはどのように用意したのか。

「基本的なマニュアルはもらっていました。肉付けは自分たちでしました。他のメンバーも詐欺の経験がありましたので、それなりにアドリブを考えました。そして、お金の受け取りや事務所、受け子の手配をして、指示していました。

 僕は、“仕事”のまとめ役であり、メンバーとは全員敬語でしたが、飲みにいくこともありました。キャバクラに行ったり。みんな歌舞伎町が大好きでしたね」

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厳しい父とは折り合いが悪かった

 詐欺を始めたフナイムさんは、両親とは別に、東京近郊の祖父母の家で過ごしていた。その前はどう過ごしたのだろうか。

「17歳のとき、高校3年で中退したんです。父親と喧嘩して、祖父母の家に預けられました。そこでもちょいちょい飛び出していたんですけどね。その後、北関東の自動販売機の製造会社で働き、寮で生活をしたり、友達の家を転々としたり。居酒屋で働いていたこともありました。その後、19歳になってまた祖父母の家に戻りました」

ノートに書いていた言葉

 高校中退して実家を飛び出したというフナイムさん。父親とはどんな関係だったのか。

「すごく厳しい父でした。小学校のときに演劇をしたいと思ったのですが、“男はスポーツだ”と言われ、演劇部に入ることができませんでした。門限は18時。守れないと正座をさせられました。殴られることもありました。

 母が父から殴られていたのも見ましたが、僕は何もできませんでした。父に従うしかない。常にイライラしていました。“勉強しろ”と言われますが、成績はよくなかったです。高校に入っても自由はなく、アルバイトをさせてくれませんでした。それにテレビを部屋に置かせてくれません」

“大学には行かせない”と言われ、悪い仲間とつるむように

 そんな生活を送っていたフナイムさんだが、大学へ行きたいと思った。

「現代史や経済が面白そうと思って、父に相談しました。父には“大学には行かせない”と言われました。“勉強しろ”と言っていたのに“大学は行かせない”。いったい、僕はこれまで何をしていたんだろうと思いました。そこから勉強なんて意味がない、と思うようになり、自分のやりたいことをしようと考えて、遊び呆けました。このころから悪い仲間とつるむようになったんです」

 そんな中で、祖父母に預けられるきっかけになったエピソードがある。

「夜遅くまで遊んでいたとき、“朝まで来なよ”と言って、女の子を家に連れ込んだことがあったんです。そのとき、夜中になって、父が部屋に乗り込んで来ました。“とっとと帰れ、このやろう”と怒鳴ったのです。女の子を帰さないといけないので恥をかきました。母が女の子を送っていってくれたんですが、もう父には恨みしかないです。もう無理だと思い、爆発しました。結果、祖父母が僕を引き取ることになったんです」