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「こいつ、本当のこと言ってんのかな?」と感じる選手も…佐々木朗希やダルビッシュ有を指導した“吉井理人”が考えるコーチが絶対にやってはいけない“ある行動”とは

「こいつ、本当のこと言ってんのかな?」と感じる選手も…佐々木朗希やダルビッシュ有を指導した“吉井理人”が考えるコーチが絶対にやってはいけない“ある行動”とは

『最高のコーチは、教えない。』より #1

2023/03/17
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 トレーニングをする人は、筋肉の「超回復」はご存じだろう。トレーニングによって傷ついた筋肉は、一定時間たつと元のレベル以上に回復する。その時点で次の負荷をかければ、さらに筋力が上がっていくという理屈だ。超回復に至るまでの間は、筋肉を休めなければならない。下手にトレーニングをすると、故障の原因になる。

人間の身体は休んでいる間に身体の動かし方を整理する

 技術面でも、反復練習を休んでいる間に、頭の中が整理されて身体が覚えるといわれている。

 技術的なスキルを実行しているときに身体がどのように動いているのか、筋肉から頭にフィードバックさせ、頭の中でこう動いたと理解し、それがまた筋肉にフィードバックされるというのだ。それによって、正しい動きを覚えていく。その意味で、反復練習のあとは休むことが大事になってくる。

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 練習をやりすぎると、整理される時間がなくなり、感覚的なずれが頭と身体をバラバラにさせてしまうことがある。

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 たとえば、簡単な漢字を何度も何度も書いていると、突如として「あれ? この字ってこんな字だったかな?」と思う瞬間がある。これは「ゲシュタルト崩壊」と呼ばれる現象だが、これと同じようなことが身体の動きにも出てくる。単純な反復練習をやりすぎると、今までできたことができなくなってしまう。注意しなければならない点だ。

 そうならないようにするには、ある程度の練習をしたら、ある程度の休養を取るしかない。人間の身体はよくできたもので、休んでいる間、つまり考えていない間に身体の動かし方を整理してくれる。その効果を信じてほしい。

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適切な睡眠を取り、健全な生活を送る

 回復、リカバリーの点では、最近とくに睡眠がクローズアップされている。これははやりという問題ではなく、本質的な問題なので十分に意識するべきだ。

 夏の暑い時期でも、身体の深部の温度と、皮膚表面の温度の差が一定以上になったときに、人間は眠気に襲われるらしい。だがアスリートは筋肉が多いので、身体の深部の温度が高い。だからなかなか眠くならないと言われる。

 その対策として、ぬるめの風呂に20分ほど入って表面温度を上げれば眠くなるという研究結果が出たそうだ。寝る前にしっかり水分を取って風呂に浸かり、部屋を暗くして冷ましながら寝るとすんなり眠れると聞いた。