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 僕はさすがに拳で壁は殴らなかったが、ベンチを蹴り上げたり、ダッグアウトの裏に回って壁を蹴って穴を開けたりしていたので、その言葉は身に染みた。もちろん、壁の修理費は自腹だ。

自分に合ったストレス解消の方法を見つけさせる

 年齢を重ねてからは、スイッチを切り替えるための別の手段に出合った。ウエイトトレーニングである。

 当時の僕は、登板の翌日に必ずウエイトトレーニングをしていた。始めたきっかけはコンディションづくりだったが、徐々に「憂さ晴らし」の要素も入ってきた。

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©文藝春秋

 重いバーベルを挙げるとき、無意識のうちに声を上げている。その声を意識し、意図的に大声を出しながら挙げてみると、スッキリすることに気づいた。前日のピッチングがうまくいって気分がいいときも、大声を上げてがんがん挙げればさらに気分が乗ってくる。

 前日にノックアウトされても、次の日にウエイトトレーニングで発散すればスッキリする。

 これは、プロ野球選手でなくても、誰でもできるストレス解消法だと思う。ビジネスパーソンは腹が立つことがあっても暴れられないし、会社の備品を蹴り上げることもできないだろう。溜めに溜めたストレスを発散できずにいると、気分を切り替えて次の仕事に臨むことはできない。実際、僕がジムに行ったときも、大声を上げながらバーベルを挙げている人を見かける。もしかしたら、彼も切り替えるために大声を出しているのかもしれない。

エアロバイクやウエイトトレーニングで追い込んだほうが効果的

 ランニングでストレスを発散させる人もいるだろう。でも、ランニングで最大限の負荷をかけるのにはかなり時間がかかるし、意外と妥協してしまうものだ。中途半端な負荷はかえってストレスを増幅させ、切り替えるところまで持っていけない。その点、ウエイトトレーニングは自分の最大値に挑戦できるから、方法としては理にかなっている。

 エアロバイクをこいで追い込むのもいいかもしれない。脈拍を極限まで上げ、夢中になってペダルをこげばストレス発散になる。日常生活の中で、脈拍が180を超えることなどない。肉体を追い込むと、精神的には解放されるように感じる。そう思える人には、お勧めできるアイテムだ。

 一般的には、おしゃべりしながら走れる程度の有酸素運動が、もっともストレス解消には効果的といわれているそうだ。しかし、この方法は有酸素運動で身体に溜まった老廃物を流し、疲労を回復するという意味での効果が大きいように感じる。精神的な強いストレスの解消には、あくまでも個人的な意見だが、僕はウエイトトレーニングやエアロバイクで追い込んだほうが効果的だと思っている。