「新庄が外野まで走っていくのを見るだけで金払う価値があったなあ」

 とは我が老父の口癖その1です。フライヤーズの頃から応援し続けて、なかなか勝てないことには慣れっこの筈なのですが、年寄りは急激な変化には弱いもの。今年はずーっとビッグボス流にぶつくさ言ってばかりおりました。でも選手時代のSHINJOは大好きな訳ですね。攻守交代時の全力疾走、これに尽きるそうです。

 口癖その2は「森本がコーチやらないかなあ」。先日、日本シリーズ第2戦を観ている時にもこれが出ました。スワローズとバファローズの試合を観ていて何でそういう話になったか、「稀哲、外野守備走塁コーチに来ないかなあ。いいコーチになると思うんだよなあ」と。私は「あ、まただ」ぐらいに聞き流しておりました。

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 そうしたらその翌日に、発表された訳です。《建山義紀氏の投手コーチ就任、八木裕氏の打撃コーチ就任、森本稀哲氏の外野守備走塁コーチ就任がそれぞれ決まりましたので、お知らせいたします》……えーお父さん! 実現しちゃったよ!

2006年当時の森本、新庄、建山 ©文藝春秋

一見、所謂「お友達内閣」のようにも映るが…

 これが月曜日のことだったので、道内ローカルのテレビが一気に沸き立ちました。というのは建山義紀がHBC北海道放送の「今日ドキッ!」に、森本稀哲がUHB北海道文化放送の「みんテレ」に、それぞれレギュラー出演している曜日だったんです。どちらも始まるのは夕方4時50分、球団の発表から3時間弱というところです。それだけあれば、ツイッターで視聴者の質問を募ることも、くす玉の用意も(これはUHBがやりました)、スーツ姿の本人の写真にF帽子をくっつけた所謂「雑コラ」を作ることも(こっちはHBC)できる訳ですね。2人とも、共演者の皆さんから祝われてるのかいじられてるのか判然としないところもありましたが(この番組どうするんですか、月曜は試合ないんだから引き続き出て下さいよ、と両方で言われてた)。

 森本稀哲が新庄剛志の特に親しい後輩なのはよく知られていることかと思いますが、1年前の新監督就任以来、建山義紀もかなり気安い間柄なんだなと改めて確認しました。テレビでインタビューしているところを観ると、「新庄さん」と「建山君」ではなく「つーさん」と「タテ」だったりする訳です。

 そういう仲の後輩がコーチになるのは一見、所謂「お友達内閣」のようにも映ります。この言い方は、あまり褒められたものではないというニュアンスですよね。えこひいきで栄達させた、という。

 ただ、プロ野球のコーチ就任を単純に立身出世とだけ見るのも違う気がするんです。それに建山義紀も森本稀哲も、試合の解説に講演活動にテレビやラジオの出演と、現役引退後の活動はなかなかに忙しそうなんですよね。彼等の場合、「ポストをもらった」のではないでしょう。