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パックン 僕がハーバードに入ったときにも、大学側が奨学金などの予算を組んでくれた。今なんて当時よりもっと充実していて、世帯収入が7万5000ドルを下回る家庭は学費がほとんどかかりません。返済不要の奨学金で、さらに生活費もタダになる。大学には、OBからの寄付金もたくさんあるからね。

 僕も在学中は1年中アルバイトをしてなんとか工面していましたけど、それでも年間数十万くらいの出費でハーバード大学に通えました。それで今、「ハーバード大卒のインテリ芸人」なんて肩書きで仕事をさせてもらってるんだから、何百倍……いや、何千倍もリターンがあるでしょ(笑)。その恩があるから、次の世代の若者もお金に困らず学校へ通えるように、僕自身も寄付を続けていますよ。

 

アメリカで就職せずに「日本で冒険」することを選択した理由

——卒業後は、日本の福井県で英会話教師として働いていたんですよね。アメリカで就職する選択肢もあったのでは。

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パックン 幼稚園から小中高、大学に至るまで、同じような環境にいて、ある意味敷かれたレールの上で生きてきました。だからレールから脱線して、もっと冒険してみたかったんです。1回きりの人生だからね。

 でも「バックパッカーで世界一周」とかは興味ないんですよ、お金を払わなきゃいけないから。日本で冒険しながらお金も稼ぐっていうのが、僕にとって魅力的な選択肢でした。それに僕は何よりも、お金に縛られて生きたくないんです。

——「お金に縛られて生きたくない」というのは?

パックン 幼い頃から母が苦労する姿を見ていたから、お金の心配ばかり抱える生活はしたくない。でもだからといって、僕は大金持ちになって贅沢がしたいわけじゃないんです。それよりも、行きたい場所に行けて、会いたい人に会える。そんな自由な人生を生きるためのお金は必要でした。

 

 ハーバードの同級生の中には、とんでもない金持ちの友人もたくさんいますよ。ウォール街に勤めたり、今のアメリカ合衆国内閣に所属してビッグになった人もいる。でも彼らは、週100時間くらいオフィスに縛り付けられていたんです。その生き方も良いと思うけど、僕には向いていないかな。お金を稼ぐために自由を失って生きるなんて。

 お金にコントロールされるのではなく、お金をコントロールして生きる。それが僕の目指す生き方です。実は僕が20代前半で投資を始めたのも、お金に縛られて生きたくなかったからなんです。

撮影=杉山秀樹/文藝春秋

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